法人格をもたず、本人や家族の所有する資産、または本人の有する知識や技能などを活用して事業を行う人のこと。小規模な小売業や飲食店、ヘアサロンやクリーニング業、家族経営の旅館や民宿、自動車修理工場など、従来は店舗や事業所を構えて事業を行う者が多かったが、近年はインターネットの普及により、ネットショップやウェブを用いたサービスなどを行う者が増加している。また、ウーバーイーツのようなデリバリー・プラットフォームの配達員などの請負業務を行う者も、個人事業主である。
日本における個人事業主の数は、総務省「労働力調査」によれば、2022年(令和4)には514万人であった。同調査によれば、個人事業主の数は1957年(昭和32)の1038万人をピークに減少傾向にある。そのなかで、女性の個人事業主の数は、2020年135万人、2021年136万人、2022年138万人と、わずかではあるが増加傾向にある。ネットショップなど、比較的簡単に開業できる事業を始める女性が増えたためと思われる。
個人事業を開業する際には、事業開始から1か月以内に、事業所を所管する税務署に「個人事業の開業届出」を行う必要がある(根拠法:所得税法229条)。個人事業によって得た所得(事業所得:おおむね売上から経費を引いたもの)には、個人事業主に対して所得税として課税される。また、複式簿記等の帳簿を備え付け、記帳された帳簿に基づいて事業所得の申告・納税を行う場合、確定申告の青色申告(申告用紙が一般の白色に対して青色となっている)を利用することができる。青色申告の特典として、65万円の青色申告特別控除や、青色事業専従者給与の適用などが受けられる(一般社団法人全国青色申告総連合ウェブサイト)。
日本においては、個人事業の登録は税務署に提出する開業届出のみであるため、例えばサラリーマンが副業で個人事業を始める場合、主な収入が給与所得となるケースでは、個人事業の開業届出は不要であるが、給与所得以外の所得(雑所得等)が年間20万円を超えている場合には、確定申告が必要である。近年、副業を容認する企業が増えており、副業の個人事業主は増加していると思われる。しかし、税務署への開業届出が不要であり、また総務省「労働力調査」においても副業の自営業主の把握はしておらず、副業個人事業主の数は不明である。