注文してすぐ食べられ、持ち帰りも可能な食品や食事のことで、転じてそれらを提供する外食産業をさすことばとしても使用される。対極のことばとしてスローフードslow foodがある。かつて経済産業省の商業統計では、ファストフードについて「客単価700円未満、料理提供時間3分未満、セルフ・サービス方式を導入しているものをさす」と定義していた。一般社団法人日本フードサービス協会(JF)では、商業統計の定義を踏まえて「利用形態:イートインあるいはテイクアウト、提供内容:食事中心、客単価:やや低い、その他特質:セルフも一部有り」と定義したうえで、「JF外食産業市場動向調査」を実施し、月次データおよび年間データを公表している。
ファストフード店の代表はハンバーガー、フライドチキン、ピッツァ、アイスクリーム、牛丼、そば、うどん、カレーライスなどがあげられる。これらにおいては、大規模なチェーン展開、基本メニューの統一、食材などの共同仕入れ、セントラル・キッチン方式(中央集中調理方式)、本部による店舗運営のシステム化、店舗の経営指導の仕組みなどによって、効率的な店舗運営とコストの引下げを実現し、売上げと利益をあげてきた。
ファストフード市場のトップの地位は、1982年(昭和57)以来、日本マクドナルドが守ってきたが、2011年(平成23)3月期決算で「すき家」を中心にさまざまな業態の店舗を展開するゼンショーに逆転され、現在に至っている。2020年(令和2)春からの新型コロナウイルス感染症(COVID(コビッド)-19)の拡大は、外食産業に大きなダメージを及ぼしたが、ファストフード店は持ち帰りや宅配といった販売形態をもつことから、弁当専門店や宅配ピッツァ店といった持ち帰り・配達飲食サービス業と並んで、感染症拡大の影響を受けづらい業態といえ、それほどの打撃は被らなかった。
なお、2003年に世界保健機関(WHO)がファストフードは肥満と関連するとの報告書を公表したあたりから、ファストフードの健康への悪影響の問題が注目されている。そのため、近年ではファストフードチェーンでも健康配慮型のメニューが提供されている。