地球温暖化による被害や災害を回避・軽減する対策づくりを後押しする法律(平成30年法律第50号)。2018年(平成30)施行。国に被害防止策や災害対策を盛り込んだ「気候変動適応計画」の策定を義務づけ、国立環境研究所(つくば市)を中核にして、農林水産業、自然災害、健康などの分野で科学的根拠に基づいた対策を推進する。おおむね5年ごとに、気候変動の影響を評価・公表する。温暖化対策に特化した法律の制定は、温室効果ガスの排出を削減させる地球温暖化対策推進法(正称「地球温暖化対策の推進に関する法律」平成10年法律第117号)に次いで2例目である。
国の適応計画では、農林水産業、水環境・水資源、自然生態系、自然災害、健康、産業・経済活動、国民生活の7分野で基本的な施策の方向性を示した。農林水産業では、高温に強い米など気温・海水温の上昇に耐えられる農林水産物の品種改良や開発を促し、魚類分布域の変化に応じた漁場を整備する。そのほかに、台風・豪雨・高潮・洪水・渇水・土砂災害などの増加に備え、空港や鉄道などのインフラ施設、防潮堤などの防災施設、ハザードマップや避難計画の整備を進める。植林や媒介生物の駆除などで熱中症や感染症の予防や健康対策を進める。また、温暖化の影響は地域ごとに異なるため、国の適応計画に基づき、自治体には地域の実情に即した適応計画づくりを促す。都道府県ごとに地域の大学などと協力して研究組織「地域気候変動適応センター」を立ち上げ、国と自治体が連携する広域協議会を設け、モデル事業を実施している。
2023年(令和5)の同法改正で、1000人以上の死者がでる年もある熱中症への対策を追加し、熱中症特別警戒制度を新設したほか、普及・啓発に取り組む民間団体を指定して予防を促進する。具体的には極端な高温が見込まれる際に熱中症特別警戒情報を発令し、市区町村に、あらかじめ指定した冷房を完備したクーリングシェルター(公民館、図書館、ショッピングセンターなど)を一般に開放するよう義務づけた。