脱炭素やカーボンニュートラルの取組みで社会構造や産業構造を変革し、成長につなげるという概念。デジタル化で社会を変革するデジタルトランスフォーメーション(DX)になぞらえ、環境配慮の「グリーンgreen」と変革を意味する「トランスフォーメーションtransformation」を組み合わせた造語である。英語圏では「trans」は「X」で代用されるため、略称はGX。地球温暖化への危機感に加え、新型コロナウイルス感染症(COVID(コビッッド)-19)による経済活動の停滞からの脱出のテーマとして、2020年ごろから使われ始めた。
グリーントランスフォーメーションの定義や解釈は定まっていないが、温室効果ガスについて、(1)化石燃料から再生可能・水素・原子力エネルギーへの転換による排出量削減、(2)森林伐採の抑制や植林、地中貯留による排出分の吸収、(3)限度を超えて排出する経済主体が排出量限度未満の経済主体から排出枠を買い取る排出量取引、のおもに3手法を採用。洋上風力、燃料アンモニア、水素、新型原子力、スマートグリッド、リサイクル、アグリバイオ資源などの新技術・産業や排出量取引市場を育成し、スマート交通、コンパクトシティ、リモート社会などの構築につなげる構想である。グローバル市場では、GXへの取組みが企業価値の判断材料の一つとみなされており、欧米を中心にESG投資などの急増が見込まれる。日本では岸田文雄政権がGXを「新しい資本主義」の柱の一つに位置づけ、2023年(令和5)、GX推進法(正称「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律」令和5年法律第32号)を制定し、電気事業法など既存5法をGX脱炭素電源法として一括改正。企業のGX投資を支援するGX推進機構(脱炭素成長型経済構造移行推進機構)の設立、新国債「GX経済移行債」の20兆円規模での発行(2023年度から10年間)、二酸化炭素の排出企業に対する化石燃料賦課金(2028年度から)、排出量取引制度(2033年度から)などのカーボンプライシング(CP)の導入、原子力発電所の60年超の運転容認などの政策を動員し、脱炭素化投資を誘発し、世界のESG投資を日本に呼び込む戦略である。