地域を限定して規制を緩和・撤廃し、地域経済を活性化させる取組み。日本では2002年(平成14)、小泉純一郎政権が構造改革の中心となる政策として創設を決めた。正式名称は構造改革特別区域制度。2003年に施行された構造改革特別区域法(平成14年法律第189号)に基づき、地方自治体が自主的に申請し、実現の可能性がある計画を内閣府の構造改革特区推進本部が認定する。実情にあわなくなった国の規制を取り除き、民間企業や自治体の創意工夫に富んだ経済活動を促し、雇用を創出するねらいがある。小学校から英語を教える「英語特区」、酒税法の規制を緩めて民宿などでどぶろくの製造を認める「どぶろく特区」、幼稚園と保育園の合同保育の解禁、通関・検疫業務の24時間化などがよく知られている。構造改革特区は2023年(令和5)8月までに累計1407件が認定された。実施された規制緩和が経済活性化に有効だと判断された場合、地域限定を解除し全国に広げる。2023年8月時点で、全国展開された規制緩和事例は949件ある。
日本の特区制度には構造改革特区制度のほか、2011年に民主党の菅直人(かんなおと)政権が創設した総合特区制度、2014年に第二次安倍晋三(あべしんぞう)政権が創設した国家戦略特区制度、東日本大震災の被災地で雇用、住宅、街づくりなどに特例措置を設ける復興特区制度などがある。構造改革特区は、他の特区と異なり、補助金や減税などの財政支援を伴わず、もっぱら規制緩和で経済成長を促すという特徴をもつ。また、他の特区がその地域の活性化に主眼を置いているのに対し、構造改革特区には、自治体が申請して国が認定すれば、同様な規制緩和を全国どこでも実施でき、規制緩和を全国に展開しようとするねらいがある。
なお、特区制度のほかに現行規制の緩和・撤廃にかかわる制度としては、「生産性向上特別措置法」(平成30年法律第25号)に基づいて創設された「規制のサンドボックス制度(新技術等実証制度)」(2021年に改正された産業競争力強化法に移管・恒久化)がある。これは事業者からの申請に基づき、期間・参加者などを限定したうえで、主務大臣が実証計画の認可を行い、現行規制を一時的に停止してドローンや自動運転など革新的技術・サービスの実証と事業化を可能にする制度である。