硬骨魚綱スズキ目アジ科アジ亜科に属する海水魚。北海道から九州にかけての日本各地沿岸、小笠原(おがさわら)諸島、東シナ海、朝鮮半島南岸、渤海(ぼっかい)、黄海、南シナ海からオーストラリア北西岸や南アフリカ、ハワイ諸島、イースター島などの沿岸のインド洋・太平洋に広く分布する。体の背腹の外郭はほとんど同様に湾曲する。体高は高く、著しく側扁(そくへん)する。吻(ふん)はややとがり、吻長は眼径よりやや長い。上顎(じょうがく)の後端は瞳孔(どうこう)下に達する。上下両顎の歯はともに絨毛(じゅうもう)状で、外側の歯はいくぶん大きい。鋤骨(じょこつ)(頭蓋(とうがい)床の最前端にある骨)にある歯帯は錨(いかり)形で、後ろの中軸部は後方へ伸びる。鰓耙(さいは)は上枝に7~10本、下枝に18~23本。背びれは2基で、第1背びれが7棘(きょく)、第2背びれが1棘23~25軟条。第1背びれはそれほど高くはなく、最長棘は最長軟条とほとんど同長である。臀(しり)びれは1棘21~24軟条で、前方に2本の遊離棘がある。側線は強く湾曲するが、第2背びれの第15、16軟条下から後部は直走する。胸部は完全に鱗(うろこ)をかぶるか、または腹面の前部に非常に小さい無鱗(むりん)域がある。稜鱗(りょうりん)(鋭い突起を備えた肥大した鱗。一般には「ぜんご」「ぜいご」ともいう)は比較的小さく、側線の直走部の全長にわたって発達し、およそ22~32枚。体の背側は青灰色から緑色で、腹側は銀白色。第2背びれと臀びれの縁辺近くに、幅の広い黒褐色縦帯があり、先端は白い。胸びれと腹びれは黄色~白色で、尾びれは暗黄色。幼魚では体側に6本の黒色横帯があるが、成長するにつれて不鮮明になる。沿岸の200メートル以浅の底生にすみ、魚類、甲殻類、頭足類などを食べる。底引網でよく漁獲される。全長40センチメートルに達するが、普通は20センチメートルくらいのものが多い。豊後(ぶんご)水道や日向灘(ひゅうがなだ)などの海域では、産卵期は9~11月で、分離浮性卵を産む。稚魚はクラゲにつくことがある。肉は美味で、刺身、照焼きなどにする。口腔(こうこう)内にシマアジノエCeratothoa trigonocephalaが寄生していることがある。カイワリ属はカイワリだけを含む。魚類研究者の木村清志(せいし)(1953― )らによるDNAの分析(2022)では、本種はシマアジ属と近縁で、さらに体高が低いマアジ属、ムロアジ属およびメアジ属と同じ系統群に入る。