防衛力強化のための財源の一部を、税外収入で確保するための法律。正式名称は「我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法」(令和5年法律第69号)で、防衛財源法ともよばれる。主管は財務省。ロシアのウクライナ侵攻や中国・北朝鮮の軍事行動活発化で厳しさを増す日本の安全保障環境に対応し、2023年(令和5)から防衛力増強のため、従来の防衛力整備計画より5年間で約14.6兆円上回る防衛費(総額43兆円)を確保する時限立法である。国有資産の売却など、税金以外の収入を積み立て、複数年度の防衛費にあてる「防衛力強化資金」を一般会計に創設するのが柱。税外収入を増やすため、財政投融資と外国為替(かわせ)の二つの特別会計から一般会計への資金繰入れを認め、新型コロナウイルス感染症(COVID(コビッド)-19)対策で増えた独立行政法人(国立病院機構と地域医療機能推進機構)の積立金を前倒し返納させることが可能となった。防衛財源確保法は税外収入の活用を目的とするが、税外収入だけでは財源が足りないため、野党などは防衛増税に道を開く法律であると批判している。
2022年末に改定した安全保障3文書(国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画)では、日本へのミサイル攻撃に対してイージス艦や地上配備型ミサイルの拡充で備えるほか、日本が攻撃を受けた場合の反撃能力(敵基地攻撃能力)としてアメリカ製巡航ミサイル「トマホーク」や攻撃型無人機(ドローン)などを保有する方針を打ち出した。こうした防衛強化財源を確保するには、(1)増税、(2)防衛費以外の歳出削減、(3)税収の上振れによる決算剰余金の活用、(4)税外収入の活用、のおもに4手法がある。このうち、防衛財源確保法によって、政府はまず2023年度に国有財産の売却、特別会計からの繰入れ、病院運営の独立行政法人からの積立金返納で約4.6兆円の税外収入を確保する。また、5年間の防衛費増額分約14.6兆円のうち、歳出削減で3兆円強、決算剰余金の活用で3.5兆円程度、税外収入で4.6兆~5兆円を確保し、残りを増税でまかなうとしている。増税は法人税、所得税、たばこ税のほか、東日本大震災の復興にあてる復興特別所得税の流用などが検討されているが、対象税目・導入時期ともに流動的である。