鉄道事業に関する法律。昭和61年法律第92号。従来の規制法の体系は、旧日本国有鉄道(国鉄)に対する日本国有鉄道法と私鉄に対する地方鉄道法に二分されていたが、1987年(昭和62)の国鉄の分割・民営化に伴い一本化したもので、事業規制の見直し、事業形態の多様化への対応などを打ち出している。
日本国有鉄道改革法等のいわゆる国鉄改革関連法の一環として制定された。国鉄が民営化されるにあたり、新幹線鉄道保有機構(1991年解散)のリース事業や貨物鉄道会社の事業などはそのまま地方鉄道法を適用することが困難であったことから、1919年(大正8)制定の地方鉄道法と1948年(昭和23)制定の日本国有鉄道法を抜本的に改正し、鉄道事業全般の統一法としたものである。ただ1900年(明治33)制定の鉄道営業法と1921年制定の軌道法は、そのまま残されている。
鉄道事業法の内容の大きな特色としては、以下の2点があげられる。第一は、鉄道事業を第1種から第3種までに区分したことである。これは国鉄改革により、貨物鉄道事業が旅客鉄道事業の経営と分離されることや、今後の鉄道への資本投資を円滑にするため、鉄道事業の経営主体と所有主体との分離を認め、それぞれを独立の鉄道事業として位置づけたことによるものである。第二は、従来の地方鉄道法と比較して、車両の検査や保線のありかたなどの基準を見直して、安全面の規制緩和を図っている点である。
旅客輸送面での鉄道事業のいっそうの規制緩和を図るための改正法が、2000年(平成12)に施行された。需給調整規制を廃止し、参入規制を免許制から許可制に、事業の廃止については許可制から1年前の事前届出制に移行した。鉄道は巨額の投資が必要であるため新規参入はほとんどなく、他方廃止は許可制から届出制へと手続が簡素化されたことに伴い、地方部での鉄道事業からの退出、すなわち撤退が容易になった。2002年改正では貨物鉄道事業の規制緩和が進められ、2006年改正では安全に対する責務が強化された。