道路利用に対して一定の料金を課すことによって、道路混雑の緩和や環境負荷を低減させようとする政策。交通需要マネジメント(TDM)のうちの一つ。基本的に道路の混雑抑制のみを目的とする混雑料金と同じように述べられることもあるが、環境負荷に関する課金の性質ももつために、厳密には混雑料金と同義ではない。
モータリゼーションの進行によって、とくに都市内や都市周辺の道路では混雑が深刻な問題となっている。従来は道路の建設、拡充によって混雑を緩和、解消するという政策がとられてきた。しかし、財政的な制約や地理的な制約もあり、道路利用に対して課金を行うことで利用者に料金に対する抵抗感を与え、需要を抑制することによって混雑を解消、緩和しようとする世界的な動きがある。イギリスにおいては、すでに1960年代よりロードプライシングの政策提案がなされていた。
経済学においては、社会的限界費用(交通量が1単位増加するときに社会全体が負担する費用の増加分)と私的限界費用(交通量が1単位増加するときに道路利用者個人が負担する費用の増加分)の乖離(かいり)部分を料金として道路利用者に課金すれば、社会的便益が最大になることが理論的に明らかにされている。しかし、実際には道路に対する課金は道路建設の資金調達のために実施されることもあり、ロードプライシングの目的は単純ではない。
また、ロードプライシングは一般道路への課金を主体とするために、低所得者の道路利用を妨げるものであるというような問題点が指摘されている。ロードプライシングは国民生活に直接影響を与える問題であるために、コンセンサスを得ることがなかなかむずかしく、多くの国々で実施が求められながら過去に挫折(ざせつ)した事例は多い。
最初にロードプライシングが導入されたのは、1975年のシンガポールであるとされている。また、ロンドンでは2003年よりロードプライシングが実施されている。そのほか、欧米で導入事例が多くみられる。東京でも2001年(平成13)ごろにロードプライシングの導入が真剣に議論されたことがあったが、実現には至っていない。
日本のETC(ノンストップ自動料金収受システム)に近いシステムがロードプライシングの実施方法として想定されることが多いが、世界各国ではGPS(全地球測位システム)機能を利用したロードプライシングの実施が検討されている。