自国以外で就労する人。移住労働者、移民労働者ともよばれる。外国人労働者は大きく合法就労者と不法就労者に分けられる。合法就労者とは、入国時に必要な身分や就労範囲を示す就労ビザ(在留資格)を得た人である。日本の合法就労者は、永住者や日本人の配偶者などの「身分に基づく在留資格」、大学教授や医師などの「専門的・技術分野」、途上国への技術協力を目的とした「技能実習」、国内人材の確保が困難な産業分野において一定の専門性・技能をもつ外国人の「特定技能」、外国公館付きの調理スタッフなどの「特定活動」、留学生が学業の妨げにならない範囲でアルバイトなどを行う「資格外活動」、の六つに分類される。「身分に基づく在留資格」があれば、業種にかかわりなく、報酬を受ける労働につくことができる。一般に「専門的・技術分野」「技能実習」「特定技能」「特定活動」は就労範囲が限られている。不法就労者は、密入国者などの不法入国者のほか、在留期間を過ぎたり、在留資格で定められた範囲以外の仕事につく者が該当する。日本政府は単純労働を対象とした在留資格はないと説明しているが、技能実習や留学などの資格で未熟練労働に従事する外国人が多数存在する状況が長く続いており、2019年(平成31)に政府は永住や家族帯同も可能となる「特定技能」という在留資格を新設・施行し、外国人を日本の長期労働力として受け入れる方針に転じた。厚生労働省によると、日本の合法就労者数(外国人労働者数、2022年10月末時点)は182万2725人で、法務省が確認できた不法就労者(不法残留者)が7万0491人(2023年1月時点)いる。
外国人労働者が生まれる要因として、国・地域間での経済格差、人口増加傾向の地域と減少傾向の地域の偏在、高所得国での単純・危険労働の忌避傾向などがあげられる。外国人労働者の活用には、労働力不足を補い、低賃金で使役する場合には労働コストを圧縮できるほか、専門知識・技術をもった外国人(高度人材)の受け入れで生産性が向上するといった利点がある。一方、外国人労働者の受け入れは、治安の悪化、不法低賃金労働の発生、言語・慣習の違いによる文化摩擦などを招くおそれがあるほか、外国人労働者の家族を含めた社会保障・教育対策が必要になるなどの課題もある。このため第二次世界大戦後の日本は「出入国管理及び難民認定法」(昭和26年政令第319号、略称「入管法」「入管難民法」)で、外国人の就労を専門的・技術的能力や外国人固有の能力に着目した人材登用のみに限定し、単純労働に従事することを厳格に排除してきた。しかし近年、グローバル化の進展のほか、バブル景気や日本の人口減少による人手不足に対応するため、外国人に就労の門戸を徐々に開放している。1989年(平成1)の改正で、在留資格に医療、教育、法律などを加え、ブラジルなどの日系人が単純労働に従事することを認めた。2009年(平成21)改正で外国人登録制度を廃止し、2012年改正では高度専門職を対象に高度人材ポイント制度を導入し、学歴や年収などに応じて一定以上のポイントを取得した者に永住権を認める優遇措置を設けた。2018年改正で「特定技能」を新設し(2019年施行)、2023年(令和5)には永住・家族帯同を認める特定技能2号の対象を製造業、外食業、農漁業などに広げた。国際協力機構(JICA(ジャイカ))は、政府の目ざす経済成長シナリオ(国内総生産年率1.24%の上昇)を実現するには、2040年に674万人の外国人労働者が必要と推計している。