三大感染症(エイズ、結核、マラリア)対策に取り組む途上国へ資金提供する官民連携の独立機関。スイス国内法に基づく非営利活動法人(NPO)で、正式名称は「世界エイズ・結核・マラリア対策基金」。略称はGFATMで、日本では2014年(平成26)まで世界基金とよんでいた。2000年の九州・沖縄サミット(主要国首脳会議)で日本政府が提唱し、2001年のジェノバ・サミットでの合意に基づき、2002年スイスのジュネーブに設立された。世界の三大感染症による年間死亡者は約250万人に上るため、グローバルファンドは先進国政府の資金拠出や民間団体・企業などからの寄付で資金を集め、予防、治療、感染者支援、保健システム強化のための事業に資金を提供している。新型コロナウイルス感染症(COVID(コビッド)-19)対策では、途上国の治療・検査物資などの調達資金を供与。毎年30億~40億ドルを支援しており、2022年9月末までに、政府・民間から累計648億ドルの資金拠出を受けている。日本政府はアメリカ、フランス、イギリス、ドイツに次ぐ世界5位の資金拠出国である。2030年までに三大感染症の流行終息という目標を掲げるが、予防・検査・治療資源が新型コロナウイルス感染症対策に集中したため、克服計画は停滞を余儀なくされている。
グローバルファンドは、(1)政府、国際機関、民間企業だけでなく、市民社会や当事者コミュニティ、宗教団体など多様なパートナーとの連携・協力を重視する、(2)自らは資金提供に徹し、感染症対策は実施国の主体性に任せる、(3)疾病の深刻さ、資金不足の程度、対策の成果などによって資金提供の優先順位を決める、(4)申請から資金供与、実績評価まですべてを公開し、高い透明性を堅持する、などの特徴をもつ。最高意思決定機関は理事会で、先進国8人、途上国7人、非政府組織2人など合計28人の理事で構成する。専門家で構成する技術審査委員会(TRP:Technical Review Panel)の審査に基づき、理事会が資金配分を決定する。途上国の監査法人などが現地監査機関(LFA:Local Fund Agent)として資金管理や事業の実施状況を点検し、2011年には資金管理がずさんで使途が不明だとして、中国向け資金提供を凍結した。