宇宙空間で太陽光により発電し、その電力を地球に送るシステム。略称SBSP。地球上でも再生可能エネルギーの筆頭として、多くの太陽光発電施設が稼働している。しかし、地上の太陽光発電の場合、夜間には発電できず、日中の天候(雨、曇りなど)により、発電効率が低下するなど、安定的な電源としては不適な場合がある。この問題を解決するため、地球の静止軌道上に大規模太陽光発電施設を打ち上げるシステムが、1968年、アメリカのピーター・グレーザーPeter E. Glaser(1923―2014)により提案された。このシステムでは、静止軌道上に発電機器を配置することにより、春分と秋分の一時期を除き、ほぼ365日24時間、発電を続けることができる。また、つねに太陽へ向けて発電パネルを制御することにより、地球上より高効率で発電できるという利点がある。当初のNASA(ナサ)(アメリカ航空宇宙局)による計画は、総重量5万トンもの超巨大衛星を多数打ち上げるものであったが、技術的困難および打ち上げコストの問題などから、実現していない。ちなみにISS(国際宇宙ステーション)の質量は約340トンである。
システムそのものは、宇宙空間に配置される宇宙太陽光発電衛星と、その電力を地球に向けてマイクロ波(またはレーザー)などで配電(送信)するアンテナ、その電力を地上で受けるアンテナ(受信局)から構成される。
アメリカでの研究は一時停滞したが、日本では地道に研究が続き、2009年(平成21)に策定された宇宙基本計画にも、宇宙太陽光発電システムSpace Solar Power System(SSPS)の開発が盛り込まれ、JAXA(宇宙航空研究開発機構)や京都大学などで継続的に研究されている。2023年(令和5)の宇宙基本計画の工程表には「2025年度を目標に地球低軌道から地上へのエネルギー伝送の実証を目ざし研究開発を行う」との記載がある。