イワヒバ科の常緑性シダ。イワマツともいう。根が絡み合ってできた仮茎をつくる。仮茎はまれに分枝し、大きなもので高さ20センチメートルを超す。仮茎の先端には枝が放射状に束生する。枝は数回分枝し、乾くと内側に巻き込む。枝につく葉は鱗片(りんぺん)状で、左右2列の腹葉と上面2列の背葉とがあり、普通は腹葉が大きく、1.5~2ミリメートル。小枝の先端につく胞子嚢穂(ほうしのうすい)は長さ5~15ミリメートルで、四角柱状。各地の山地の岩壁や岩上の日当りのよい場所に着生し、乾燥には強い。枝の形や色などに変異が多く、江戸時代から園芸品種として知られ、現在150に余る品種がある。多くは盆栽として観賞されるが、庭植えされることもある。珍重されるのは、白斑(はくはん)の入ったもの、黄斑の入ったもの、黄金色の葉をもったものなどである。仮茎はまれに着生植物の栽培用に用いられる。野生状態での不定芽による無性生殖や、胞子生殖とは別に、園芸的には枝の一部を切って砂地に挿す「葉挿し」によって、品種の維持、増殖がなされている。
鉢底に鹿沼土(かぬまつち)を入れ、その上に腐葉土5、ミズゴケ5、あるいは鹿沼土4、ミズゴケ6の混合土を入れて栽培する。日照時間は品種によって変えるのがこつで、白斑系は朝夕2時間ずつ、黄斑系は朝夕3時間ずつ日光にあて、あとはよしず張りの下に置く。黄金色系は日中3~4時間だけ、よしず張りの下に置き、あとは日光にさらす。春から秋までは十分に灌水(かんすい)するが、冬はフレーム、または屋内に入れて、鉢土が乾かない程度に水をやる。
近縁種のカタヒバS. involvensは仮茎をつくらず、浅く地中をはう地下茎と直立する地上茎をもつ。地上茎は高さ15~40センチメートル。数回羽状に分枝し、鱗片状の腹葉と背葉をつける。胞子嚢穂は小枝に頂生する。葉身状の全体は黄緑色。関東地方以西の各地の山地岩上に群生する。