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ヒカゲノカズラ科の常緑性シダ。径5ミリメートルの茎は長く地表をはい、針状の葉をつける。互生する側枝は直立し、さらに枝分れする。この枝の先に円柱状で長さ5センチメートル前後の胞子嚢穂(のうすい)を頂生する。北半球の温帯に普通にみられ、日本では北海道から九州にかけての丘陵地から深山にまで広く分布する。昔から親しまれた植物で、『古事記』にもその名が記され、『万葉集』巻19では「あしひきの 山下日影(ひかげ) かづらける 上にや更(さら)に、梅をしのはむ」と詠まれている(日影=ヒカゲノカズラ)。今日でも地方によっては新年や祝いの席に飾る風習がある。胞子は石松子(せきしょうし)といい、脂肪油が40~50%も含まれているため、防湿性がある。このため、かつては丸薬の衣としたり、ベビーパウダーに混入されていた。また、花火の閃光(せんこう)剤、鋳型の分型剤などにも利用されることがある。全草を煎用(せんよう)すれば利尿や通経の効があるという。近縁のアスヒカズラL. complanatumもヒカゲノカズラと同様に利用される。コスギランL. selagoも近縁種で、高山帯の岩間に生え、氷河期の生き残りとされる。メキシコでは駆虫剤に利用するが、近年、アルコール中毒の治療に有効とされるセラギンというアルカロイドが抽出された。料理のあしらいにスギのかわりに用いられるマンネンスギL. obscurumもこの仲間である。