児童手当法(昭和46年法律第73号)に基づいて、児童を養育している家庭に支給される手当。家庭における生活の安定に寄与し、次代の社会を担う児童の健全な育成および資質の向上に資することを目的としている。児童手当制度は、ほかの社会保障制度や他国の児童手当制度と異なり、(1)全国民を対象にした単一の制度、(2)事業主拠出金の導入、(3)一般児童健全育成施策としての位置づけ、という三つの特徴をもっている。
1940年代から児童手当の必要性が指摘されていたものの、当時はより緊急性の高い施策を優先せざるをえない事情や人口過剰が問題となっていたことから制度化は遅れ、1960年代に入ってようやく具体的な制度設計の議論が始まり、1971年(昭和46)に児童手当法は成立した。
当初は義務教育修了前の児童を含む18歳未満の児童3人以上を監護し、かつこれと一定の生計関係にある者に対して、第3子以降の児童1人につき月額5000円(市町村民税所得割非課税者の場合には7000円)の手当が支給されていた(月額3000円からの段階的拡大)。また所得制限は5人世帯で200万円程度と設定されてスタートした。その後はとくに少子化が問題になる1990年代以降、支給対象児童および年齢が拡大し、支給額は増額、所得制限の強化・緩和、費用負担割合の見直しなどが継続的に行われている。1994年(平成6)には、各種の育児支援サービスや児童の健全育成のための条件整備を行う「児童育成事業」による助成が制度化された。
2007年(平成19)にはようやく3歳未満の支給額が一律1万円、3歳以上小学校修了前の児童は第1子・第2子が5000円、第3子以降が1万円になり(特例給付)、所得制限限度額は夫婦と児童2人世帯の場合、574万円程度(会社員等は646万円程度)となった。2009年に政権交代によって誕生した政府(当時の民主党)は、選挙公約であった「子ども手当」を2010年4月から実施し、これにより月額1万3000円を、0歳以上15歳に達する最初の年度末まで、所得制限なく支給することとなった。これにより児童手当は廃止された。その後子ども手当は、翌2011年10月から2012年3月までは3歳未満と小学生までの第3子以降が月額1万5000円、3歳から小学生の第2子までと中学生は月額1万円が支給されることになった。しかし、東日本大震災の復興財源の確保を優先するため、2012年3月で子ども手当は廃止されることとなった。
子ども手当の廃止に伴い、2012年4月「児童手当法の一部を改正する法律」が施行され、新たな児童手当制度が始まった。支給対象は中学校修了までの国内に住所のある児童。受給資格者は監護生計要件を満たす父母などで、児童養護施設に入所している児童については、施設の設置者等が受給資格者となる。また、受給対象には所得制限が設けられる(所得制限は同年6月分から適用)。支給額(月額)は、3歳未満が一律1万5000円、3歳~小学校修了までは第1子、第2子が1万円、第3子以降が1万5000円、中学生は一律1万円。所得制限限度額は夫婦と児童2人の場合、年収ベースで960万円。ただし当分の間の特例給付として、所得制限以上の児童にも一律5000円が支給される。なお、保育料は直接徴収が可能で、学校給食費等は本人の同意により手当から納付することが可能である(いずれも自治体の判断により実施)。