消費者と事業者とが交わすすべての契約で、虚偽説明や不適切勧誘があった場合に契約を無効にしたり、あとから取り消したりすることができるルールを定めた法律。平成12年法律第61号。2001年(平成13)施行。事業者のもつ情報の質・量や交渉力が消費者より圧倒的にまさっている状況を踏まえ、悪徳商法だけでなく、消費者に不利な商慣行などから消費者の利益を守る目的がある。大学合格時に納めた授業料の入学辞退者への返還、賃貸住宅の退去時に敷金や保証金の一部を無条件でとられる「敷引き」が契約書に記載されていなかったり、相場からみて不当に高額だったりする場合は、それを無効とするなど、消費者契約法に基づき、消費者に不利だった状況が改善された事例は少なくない。しかし悪質商法などによる被害は後を絶たず、勧誘・契約手法の巧妙化、高齢化の進展、インターネットの普及にあわせ、消費者契約法はたびたび改正されている。
2006年の改正で、消費者にかわって、内閣総理大臣が認定した消費者団体(適格消費者団体)が事業者の不当行為を差止請求できる消費者団体訴訟制度を導入した。契約を取り消せる不当勧誘の対象を段階的に拡大し、何十着もの着物を販売するといった「過量販売契約」、「シロアリがいて家が倒壊する」といったうその説明をする「不実告知」(以上、2016年改正)、判断力が低下した高齢者に対する「つけこみ型商法」、就職できないなど根拠なく不安をあおって売りつける「不安商法」、恋愛感情につけこむ「デート商法」、かってに商品などを交換して代金を請求する「事前提供」(以上、2018年改正)、勧誘することを告げずに退去困難な場所に同行して勧誘する行為、威迫する言動を交えて相談するための連絡を妨害する行為(以上、2022年改正)などを、不当勧誘の対象に加えた。不当勧誘による契約の取消し行使期限については、消費者が誤認していたと気づいたときや勧誘による困惑状態から脱したとき(追認できるとき)から半年だったものを1年へ延長(2016年改正)し、霊感商法などについては、契約締結から10年、追認できるときから3年まで取消し可能とした(2022年改正)。このほか、事業者自らが損害賠償の責任の有無や限度を決める条項(2018年改正)、「法令に反しない限り」など免責範囲が不明確な条項(2022年改正)などを、それぞれ無効とするとともに、解約料の算定根拠などの説明を事業者の努力義務(2022年改正)とした。
なお、消費者契約法とは別に、訪問販売や電話勧誘などの取引手法に限定し、消費者保護を目的とする法律に特定商取引法がある。特定商取引法は、一定期間内の解約を認めたクーリング・オフ制度などを定めている。