中央集権的な行政のあり方を見直し、国から地方へ権限や財源の移譲を進める法律の総称。地方自治法を中心に複数の法律を一度に改正するので一括法の名がある。1993年(平成5)から2001年(平成13)までの第一次地方分権改革で成立した「地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律」(平成11年法律第87号)を意味する場合と、2006年以降の第二次地方分権改革を実現するための「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」(平成23年法律第37号を第一次地方分権一括法とし、ほぼ毎年成立している第二次以降の一連の法律)をさす場合がある。
「地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律」は1999年に成立し、ほとんどの内容が2000年4月に施行された。1995年設置の地方分権推進委員会の勧告(第一次~第五次)の内容を実施に移すため、改正が必要な地方自治法など475件の法律を一括改正した。国と自治体の関係を対等とし、本来国がすべきだが自治体に任せていた機関委任事務を廃止し、自治体が自主的に行う「自治事務」と自治体が国から引き受ける「法定受託事務」を創設した。自治体が条例で独自に導入できる法定外目的税(税収を特定目的に使用)を創設し、従来あった法定外普通税(税収使途を限定せず)の導入も国の許可制から事前協議制へ変え、導入しやすくした。
2011年に成立した「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」(平成23年法律第105号。第二次地方分権一括法)では、地方分権改革推進委員会(2007年設置)の勧告に基づき、一次から四次にわたって、地方自治体への権限の移譲や、法律で自治体に事務処理を義務づけ国が事務処理基準を定めた「義務付け・枠付け」を廃止する関連法を一括改正した。2014年からは、委員会勧告方式にかえて、地方から提案のあった権限移譲や規制緩和に必要な関連法を一括改正する提案募集方式に変更。2023年(令和5)までに第五次から第十三次にわたる地方分権一括法が成立し、農地転用基準の緩和、地方版ハローワークの設置解禁、被災者への災害援護資金の低利貸付や罹災(りさい)証明書の発行の迅速化、学童保育(放課後児童クラブ)の全国一律基準の撤廃、空家の所有者特定のための住民基本台帳ネットワークシステムの活用などが実現した。