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日本大百科全書(ニッポニカ)

アイロン

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アイロン
あいろん
iron 英語

熱と圧力によって、布地のしわを伸ばし、折り目をつけ、衣服の形を整えるなど、和洋裁や洗濯の仕上げに用いる器具をいう。
[熊田泰治・深井晃子]

歴史

アイロンは、その名「鉄」の意のとおり、19世紀中ごろ、イギリスで取っ手をつけた鉄の厚板に石炭のおき火をのせて、衣服のしわを伸ばしたのが始まりといわれている。これよりも前、16世紀には当時流行したラフ(襞襟(ひだえり))を形づくるためのこてが用いられていた。日本では、古くから金属製の火桶(ひおけ)に木製の柄がついた火熨斗(ひのし)が使用され、江戸中期ごろからは笹鏝(ささごて)が用いられた。19世紀末ごろにはイギリスから西洋火熨斗(アイロン)が導入された。今日のような電気アイロンは、ニクロム線の開発によって熱源が急速に電気に変わった20世紀以降用いられるようになった。
[熊田泰治・深井晃子]

種類と構造

熱源により、ガス、電気に分けられる。ガスアイロンは内部にガスバーナーの装置のあるもので、おもに職業用に使われたが、火力の調節や使用の不便のため現在ではほとんど使用されていない。電気アイロンの発熱方式には、雲母(うんも)(マイカ)板にニクロム線を巻き付けた発熱体を底金に取り付け、熱を底面に伝えるマイカヒーター式と、ニクロム線をあらかじめコイル状に巻き、金属管内に収納し、酸化マグネシウムにより絶縁、封印した棒状の発熱体を底金の中に埋め込み、底面に熱を伝えるシーズヒーター式とがある。アイロンの種類は現行日本工業規格(JIS(ジス))によると、機能別に、ドライアイロンとスチームアイロン(蒸気)に分類される。重量はあまり問題にされず、発熱体や軽量金属材料の開発で、軽くて熱効率のよいものへ変わりつつある。ただし職業用としては、ワット数に加えて重量があるほど効果がよい。家庭用としては、400~700ワットの消費電力で、重量は1000~1300グラムのものが用いられている。家庭用アイロンは、ほとんど自動温度調節器付きの自動アイロンとなっており、内部にバイメタルによる電流の断続装置があり、温度を一定に保つことができ、ダイヤルを回し、バイメタルの接点距離を調節すれば温度調節ができる。近年、アイロンの底金にフッ素樹脂塗装を施したものが主流になってきた。アイロンかけの際、繊維との滑りをよくし、焦げ付きを防止するのに有効である。スチームアイロンには、タンク式(胴体内のタンクの水を電熱で沸騰させ、できた蒸気を底面の穴から噴射させる)と、滴下式(タンクの水を少しずつ底の発熱体の上に滴下させて蒸気にし、穴から噴射させる)とがある。滴下式のほうが蒸気の噴射口が多く、広く均一に蒸気が出るので能率よく仕上がり、広く使われている。使用する水が蒸留水でないと水あかがたまる欠点があるため、噴射口は手入れのしやすい構造になっている。いずれも霧吹きの必要がないので、羊毛製品の仕上げに有効である。なお、滴下式スチームアイロンには、水タンク部分をアイロン本体から取り外せるカセットタンク形式のものがある。これはカセットタンクで注排水が行えるので、使いやすい。
[熊田泰治・深井晃子]

使用法

アイロン仕上げの効果は、適度の湿度を含ませて熱と圧力を加えると、繊維には一定の形を相当期間保つ性質があることを利用したもので、温度、接触時間、水分、加圧力などの総合効果である。したがって、アイロンの適正温度を選び、適度に湿っている繊維に加圧すると、アイロンの効果は大きい。適正温度は繊維の種類によって異なるので、注意が必要である。しかし最近では、おもな繊維に対する適正温度が表示されており、また熱と水蒸気を併用するスチームアイロンは、仕上げの目的が簡単に得られて使いやすくなっている。アイロン台の上で、布地によっては当て布をあてながらアイロンをかけるが、この際、与えた湿気は完全に乾かさないと、型くずれやしわを生じやすいので、注意する必要がある。
 なおアイロンにはこのほか、用途により、小型軽量の旅行用アイロン、アイロンと同一構造の和裁用電気ごて、毛髪用のアイロンなどもある。また、ズボンの折り目つけ用にはズボンプレッサーがある。
[熊田泰治・深井晃子]

©SHOGAKUKAN Inc.

メディア

スチームアイロンの蒸気発生方式

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