2011年(平成23)3月の東京電力福島第一原子力発電所事故による放射線の影響で、住民すべてに約1か月以内の立退きを要請した地域。2011年4月22日から2013年8月7日まで存在した。住民の生命・身体への危険を防ぐため、立入りを原則制限・禁止した避難指示区域の一つである。福島第一原発から半径20キロメートル圏(警戒区域)外にあるものの、1年間の積算放射線量が20ミリシーベルトに達するおそれがあった地域をさす。国際原子力機関(IAEA)など国際機関の基準を考慮し、政府は20ミリシーベルトに達する地域に居住し続けると、人体に影響を及ぼすおそれがあると判断した。原子力災害対策特別措置法(平成11年法律第156号)に基づき、2011年4月22日、福島県の飯舘(いいたて)村(全域)、葛尾(かつらお)村(福島第一原発から半径20キロメートル圏内を除く全域)、浪江(なみえ)町(同)、川俣(かわまた)町の一部、南相馬(みなみそうま)市の一部を指定、同年5月中の退避を求めた。対象住民は約1万人。同区域から避難した住民には東京電力から賠償金が支払われ、医療費が全額免除となるほか、固定資産税、都市計画税、国民年金保険料の減免措置を受けられた。計画的避難区域内の除染作業は国が直接担当した。
政府は事故後、住民の避難を求める区域として、計画的避難区域のほか、原則として立入禁止の「警戒区域」と、「緊急時避難準備区域」(福島第一原発から半径20~30キロメートル圏内で、年間積算放射線量が20ミリシーベルトに達しないと推定される区域)を設けた。このうち、緊急時避難準備区域は2011年9月末に解除された。計画的避難区域と警戒区域については、放射線量ごとに新たに区域を再編。2012年4月から地元自治体の同意を得ながら順次、原則立入り・居住を制限する「帰還困難区域」(指定開始時点で年間推定積算放射線量が50ミリシーベルト超の地域)、宿泊はできないが一時帰宅は認める「居住制限区域」(同20ミリシーベルト超のおそれがあると確認された地域)、宿泊はできないが一時帰宅のほか事業所再開や営農再開を認める「避難指示解除準備区域」(同20ミリシーベルト以下となることが確認された地域)の3区域を新たに設け、2013年8月に指定を完了した(居住制限区域は2019年4月9日に解除、避難指示解除準備区域は2020年3月9日に解除)。さらに帰還困難区域のうち、駅前や住宅密集地などに「特定復興再生拠点区域」、住宅が点在する地域に「特定帰還居住区域」を設け、2029年までに希望者全員の帰還を目ざしている。