使用済みの携帯電話、パソコン、ゲーム機、デジタルカメラなどの小型の家電製品を回収し、製品に含まれる金、白金、鉄、パラジウムなどの金属を取り出し、再利用すること。2013年(平成25)に施行された小型家電リサイクル法(正式名称「使用済小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律」平成24年法律第57号)に基づきスタートした。環境省の調べでは、日本では当時、毎年約65万トンの小型家電が廃棄され、含まれる約28万トン(844億円相当)の有用な金属のほとんどが回収されず、埋立て処理されたり、海外へ流出したりしていた。この住宅や街に眠る「都市鉱山」ともよばれる貴重な資源を再利用することが目的で、政府は2015年度末までに年間14万トン(国民1人当り1キログラム)の小型家電製品の回収を目標としたが、実績は年間約10万トン(2020年度)にとどまっており、目標時期を2023年度(令和5)まで先送りし、大規模リサイクル事業者の育成やリサイクル技術の高度化に取り組んでいる。
リサイクルの対象は、電話機、スマートフォン、AV機器、ビデオカメラ、プリンター、電子書籍端末、電動ミシン、電気時計、ドライヤー、扇風機、電子レンジ、炊飯器、照明器具など簡単に運搬できる製品28分類100品目以上に及ぶ。2001年に家電リサイクル法で回収が義務づけられたテレビ、冷蔵庫、洗濯機・乾燥機、エアコンを除く、ほぼすべての家電製品が対象である。ここから鉄、アルミニウム、銅などの通常金属(ベースメタル)のほか、金、銀、白金などの貴金属、パラジウム、セレン、テルルなどの希少金属(レアメタル)など16種類を回収する。家電リサイクル法と異なり、小型家電リサイクル法は消費者負担を求めず、あくまで自主的な回収に任されている。回収は地方自治体が窓口となり、専用の回収箱を公共施設や商業施設に設置するほか、集めた不燃ごみや金属ごみから家電製品をピックアップ回収する。携帯電話やパソコンなどには個人情報が残っている可能性が高いため、回収箱などは施錠し回収過程で個人情報が漏れないようにする。
国の認定を受けたリサイクル業者が地方自治体から無償で家電を引き取り、回収品を破砕・溶解して、貴金属やレアメタルを取り出す。認定業者は市町村長から廃棄物処理業の許可を受ける必要はなく、地方自治体を通さない独自収集も認められる。小型家電リサイクルを採算にのせるには、広域から大量の廃家電を集める必要があり、政府は自治体からの引取りを無償にしたり、市町村認可を不要としたりすることで、全国規模や複数都道府県にまたがって事業を展開する大規模リサイクル業者の育成を目ざす。また、家電メーカーや販売店が自主的に進めてきた携帯電話やパソコンのリサイクルは従来どおり続けられる。認定事業者は全国で66事業者(2023年11月時点)あり、全国で93%(2018年度)の市区町村が回収に取り組み、家電量販店の2000を超える店舗が店頭回収を実施している。社会のデジタル化に欠かせない、リチウムなどレアメタルの効率的な回収技術の開発が課題である。