イランの女性人権活動家、ジャーナリスト。女性差別・抑圧策をとるイランにおいて長年、女性の権利・自由・尊厳の擁護や死刑廃止などを求めて活動している。繰り返し逮捕・投獄されながら、女性への弾圧と闘い、人権・自由の獲得活動を推進した功績で、2023年のノーベル平和賞を単独受賞した。受賞時も、テヘラン刑務所に収監中であった。
1972年、イラン北西部のザンジャン州生まれ。カズビーン国際大学(現、イマーム・ホメイニ国際大学)物理学科を卒業。学生時代から女性・人権問題に取り組み、学生の権利や社会正義に関する記事を書いて二度逮捕された。卒業後、エンジニア関連職についたが、体制改革派の雑誌などに記事を書き、ジャーナリストとして活動。弁護士シリン・エバディ(2003年ノーベル平和賞受賞)が代表を務めるイランの人権団体である人権擁護センターの副代表を務めながら、女性差別の撤廃、人権擁護、専制政治からの自由・解放などに取り組んでいる。2022年、公共の場での女性のヘジャブ(スカーフ)着用問題を契機にイランで大規模デモ(拘束2万人以上、死者500人以上)が発生した際には、獄中からSNSなどでデモへの連帯を訴えた。反体制活動を理由に1998年以降、イラン当局に十三度逮捕され、五度有罪となり、禁固刑期は累計31年に及ぶ。夫のタギ・ラフマニTaghi Rahmani(1959― )も人権活動家で、2人の子どもとともにフランスに亡命中である。投獄・拘禁中の人物がノーベル平和賞を受賞するのはベラルーシの人権活動家ビャリャツキに続き2年連続で、過去にはミャンマーのアウンサンスーチー、中国の劉暁波(りゅうぎょうは)らがいる。