日付変更線より東の太平洋赤道海域で、平均海水温度が、ふつう6か月ほど連続して0.5℃くらい平年より低くなる現象。これとは対照的に、同じ海域で海水温度が高くなる現象はエルニーニョ現象とよばれる。エルニーニョ現象の語源がスペイン語の男の幼子に由来することから、スペイン語で女の幼子を意味するラニーニャが語源である。ラニーニャ現象やエルニーニョ現象は、日本を含め世界中の異常な天候の要因になりうると考えられている。
エルニーニョ現象は19世紀末から漁業関係者によって取り上げられてきたが、ラニーニャ現象は1984年夏から1985年夏、さらに1988年春から1989年春にかけておきたときから注目されるようになった。
平常時の熱帯域は、貿易風とよばれる東風がつねに吹いており、海面付近の温かい海水が太平洋の西側に吹き寄せられている。このため、西部のインドネシア近海では温かい海水が蓄積し、東部のペルー沖ではこの東風と地球の自転の効果で深い所から冷たい海水が湧(わ)き上がっていることから、海面水温は西で高く東で低くなっている。
ラニーニャ現象が発生している時は、東風が平常時より強くなり、太平洋赤道域の西部に温かい海水がより厚く蓄積する一方、東部では冷たい海水の湧き上がりが平常時より強くなる。このため、太平洋赤道域の中部から東部では海面水温が低くなって大気の対流活動が不活発となり、西部のインドネシア近海の海上では、積乱雲がいっそう盛んに発生する。
ラニーニャ現象が発生すると、日本付近では、夏季は太平洋高気圧が北に張り出しやすくなり、気温が高くなる傾向がある。沖縄・奄美(あまみ)地方では南から湿った気流の影響を受けやすくなり、降水量が多くなる傾向がある。一方、冬季は西高東低の冬型の気圧配置が強まり、気温が低くなる傾向がある。
近年における顕著なラニーニャ現象は、1954年春~1956年夏、1970年春~1971/1972年冬、1984年夏~1985年夏、1988年春~1989年春、2007年夏~2008年春、2021年秋~2022/2023年冬におきた。