地方公共団体の住民が直接選挙する議員によって構成される(合議制機関)、同団体の意思決定を行う機関(議事機関)。都道府県、市町村および特別区に置かれる議会の総称。
日本国憲法は地方公共団体に法律に基づき議会を設置すると定め(日本国憲法93条1項)、地方議会を必置機関としている(地方自治法89条1項)。ただし、町村については議会を置かずに、選挙権を有する者の総会を条例で設置することができる(地方自治法94条)。
地方議会は、国会と内閣の関係と異なり、執行機関に対して優越的な地位が保障されてはおらず、並列・対等の関係である。
地方議会は議員によって構成される(議員定数は条例で定める)。議員が選挙する議長が地方議会の代表であり、議場の秩序を保持し、議事を整理し、議会の事務を統括する(同法103条1項、104条)。議会の会議には最終的に意思決定を行う議員全員による本会議と、本会議の議決前に、地方公共団体の事務を予備的、専門的に調査・審議する委員会がある。本会議は定例会と臨時会である(同法102条1項)。2004年(平成16)の地方自治法改正前は、定例会の回数は毎年4回以内とされていたが、改正後に定例会は毎年、条例で定める回数を招集しなければならないとされた(同法102条2項)。定例会の会期を通年としている地方公共団体は1県14市31町村、定例会を年1回と定める地方公共団体は2県32市区31町村ある(2021年4月1日時点)。委員会には常任委員会、議会運営委員会および特別委員会があるが、これらは設置が義務づけられていない(同法109条1項)。
議会の招集は、原則として地方公共団体の長が行う(同法101条1項)。議会の会議の運営について地方自治法は、会議は公開で行われるべきこと(同法115条1項)、会議は議員の定数の半数以上が出席しなければ開くことができないこと(同法113条)、議会の議事は出席議員の過半数で議決しなければならず、可否同数の場合は議長が決定すること(同法116条1項)、そして、議会は会期ごとに独立したものであり、議決に至らなかった事件は会期終了で消滅し、これ以降の後会に継続しない(同法119条)という会議原則を定めている。
地方議会は、地方公共団体の意思を決定する議決権が授権されている(同法96条)。議決権の範囲は、条例の制定・改廃や予算の決定、契約の締結、法律・政令で議会の権限とされている事項など広範囲に及ぶ。執行機関に対する監視権限として、地方公共団体の事務の書類・計算書の検閲や執行機関の事務の管理、議決の執行および出納の検査権(同法98条1項)、監査委員に対する事務の監査請求権(同条2項)、証人喚問や証言請求を行えるいわゆる100条調査権が認められている。このほか、議会の会議規則の制定(同法120条)、議員の資格決定(同法127条1項)や懲罰(同法135条)についての権限も有する。懲罰について、これまで除名のみが司法審査の対象とされてきたが、2020年(令和2)11月、最高裁判所は出席停止処分の取消しを求める訴えは法律上の争訟に該当するとして(最高裁判所大法廷令和2年11月25日判決民集74巻8号2229頁)、1960年(昭和35)最高裁大法廷判決の判例変更が行われた。
議会の解散については、地方公共団体の長に対する議会の不信任決議がなされたときに長が議会を解散する場合(地方自治法178条1項)、「地方公共団体の議会の解散に関する特例法」(昭和40年法律第118号)に基づき議会が自主解散する場合、住民による議会の解散請求による場合(地方自治法76条1項)がある。
地方議会については、その改革や活性化のために議会基本条例を制定する市町村や県が出てきている。他方で、都道府県議会や町村議会で無投票当選の割合が増加していること(2019年統一地方選挙で都道府県県議会議員選挙で26.9%、町村議会議員選挙で23.3%を占める)、地方議会における女性議員の割合が男性の議員に比べて著しく低いこと、などの問題が指摘されている。
明治憲法下においても、府県会、市会や町村会に議決機関が置かれていた(このほか、北海道会、府県組合会、市町村組合会、町村組合会にも設置されていた)。市町村会、府県会の選挙権は、1926年(大正15)に納税要件が撤廃されて普通選挙が実施されたものの、選挙の資格は男性に限定されており、住民の代表機関とはいえないものであった。市町村会においては、条例制定や起債等について内務大臣の許可が原則必要とされていたし、内務大臣には市町村会の解散権限も認められていた。府県会および市町村会の双方に議決権が付与されていたものの(府県会の議決権は法令に定める事項に限定されていた)、議決にあたって監督官庁の許可を要し、また、監督官庁が府県会や市町村会の議決を取り消すことも認められていた。明治憲法下の地方議会は中央集権的官僚統制下に置かれ、国の後見的監督の下に置かれており、住民自治と団体自治の原則に基づく地方自治のための地方議会と位置づけることはできないものであった。
海外の地方議会は、日本のそれと異なり、組織や権限、執行機関との関係も一様ではない。
イギリスにおいては、イングランドとウェールズ、スコットランド、北アイルランドでは地方制度も若干異なっている。首都ロンドンを例にとると、広域団体であるグレーター・ロンドン・オーソリティー(Greater London Authority:GLA)の下に、ロンドン区とシティ・オブ・ロンドン・コーポレーション(City of London Corporation。略称シティ・オブ・ロンドン)がある。GLAにロンドン議会が置かれており、その権限は、ロンドンの政策課題(交通、警察、住宅など)の調査・検討や予算編成などである。ロンドンや大都市圏以外の地域の地方公共団体は、「カウンティCounty」と「ディストリクトDistrict」の二層制となっており、それぞれに議会が置かれている。これらの地方議会には、執行機関の政策決定や執行について評価や監視をする権限などが与えられている。
アメリカにおいては、地方議会は、郡、市、町、村ごとに置かれる。アメリカにおける市制についていえば、市長・市会型(市長も住民により直接選挙され、市会は立法機関、市長は執行機関として行政権を担う)、市会・支配人型(市会が立法権と行政権を担うが、1人の市支配人を選任して行政的職務を一任し、市会がその監督にあたる)などがあり、その組織についても権限についても一様ではない。
ドイツの地方制度も各州によって異なるが、各州の郡や市町村に議会が設置されている。市町村の議会では、議会の長と執行機関の長がそれぞれ直接選挙で選ばれる場合や、議会の長が執行機関の長を兼ねる場合などがある。市町村の議会は、条例制定権限や市町村行政に関する権限を有する。郡の議会は、条例制定権限とともに、市町村の区域を超える広域事務や市町村の補完事務などに関する権限を付与されている。
フランスの地方公共団体としては、州、県、コミューン(市町村)がある。これらの地方公共団体には審議・議決機関として議会が置かれており、それぞれの議会の長が同時に執行機関の長でもある。これらの地方議会は、地方公共団体の予算の審議、財産の維持・管理や社会保障に関する事項などについての権限を有している。パリ、マルセイユ、リヨンの大都市には区が設置され、各区に区議会が設けられている。