東日本大震災の教訓を踏まえ、大規模災害・事故から国民の生命や財産を守る国づくりを進めるための基本法。2013年(平成25)に議員立法で成立し施行された。正式名称は「強くしなやかな国民生活の実現を図るための防災・減災等に資する国土強靱化基本法」(平成25年法律第95号)。首都直下や南海トラフなどの大規模地震、津波、噴火、台風、局地的豪雨のほか、トンネル崩落など老朽インフラ事故を想定。防災・減災の考え方に基づき、社会資本の整備、迅速な避難・人命救助の体制確保、帰宅困難者対策、鉄道・高速道路の代替ルートの確保、防災教育の充実、国の中枢機能のバックアップなどに取り組むとしている。
内閣総理大臣をトップに全閣僚で構成される国土強靱化推進本部を設け、おおむね5年ごとに指針となる「国土強靱化基本計画」を策定する。基本計画では老朽化した道路・橋・トンネル・堤防などを計画的に点検し、防災対策の課題や弱点を洗い出す「脆弱(ぜいじゃく)性評価」を実施し、優先順位をつけて強靭化政策を進める。基本計画に基づき、国土交通省、経済産業省などの中央省庁や地方自治体は防災対策を策定する。第一次国土強靱化基本計画(2014)では、ハードとソフト対策の組合せ、官民協力で公共施設を運営するPPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)などによる民間資金の活用などを示した。全域停電が起きた北海道胆振(いぶり)東部地震や西日本豪雨災害の反省から、第二次基本計画(2018)には、発電施設の分散化、地域間の電力融通能力の強化、治水対策の強化などを盛り込んだ。第三次基本計画(2023)は、最先端技術を活用した線状降水帯などの予測精度の向上や災害現場の情報収集、マイナンバーカードによる安否確認、災害用トイレの設置などによる避難所の環境の改善、外国人旅行者らへの情報発信の充実などに取り組むとした。国土交通省は国土強靭化基本法に基づき、2014年から毎年、その年に取り組むべき施策をまとめた年次計画(アクションプラン)を策定している。しかし会計検査院の2018~2020年(令和2)調査では、基本計画にはない事業に約672億円が支出されていることが判明した。