一戸建てやマンションなどの住宅(宅地を含む)の購入資金や新築・増築・改築資金を調達するために金融機関から受ける融資のこと。住宅は個人の買い物として高額であるため、融資・返済期間は10~30年超と、通常のローン商品より長期となるのが一般的である。民間金融機関にとって、融資期間が長期にわたる住宅ローンは、メインバンク(主取引金融機関)となって顧客を囲い込む効果が期待できることから、個人向けの代表的融資商品と位置づけられている。
住宅ローンは、金利が借入時から全期間変わらない固定金利型、半年など一定期間ごとに変わる変動金利型、当初5年など一定期間は固定金利で残り期間は変動金利となる金利ミックス型に分けられる。一般に、借入時には保証料や取扱手数料がかかる。また、住宅ローンの借り主が死亡あるいは重病になった場合には元利金返済を免除されるなど、さまざまな保障内容の保険がある。なお、契約時に決めた返済額に加えてローンの一部を返済することを「繰り上げ返済」とよび、手数料無料で繰り上げ返済できる金融機関が増えている。住宅ローンの普及は、国民の持ち家取得を促すという国の住宅政策に合致する。このため、住宅ローンを利用して住宅を購入した場合、所得税などが軽減される住宅ローン減税制度が設けられている。また、政府は若い夫婦(いずれかが40歳未満)や子育て世帯(子が19歳未満)が、省エネなど環境性能の高い住宅を購入した場合、他の世帯に比べ、減税対象となるローン借入限度額を大きくすることで、子育てしやすい環境の整備や、環境に優しい住宅の取得を促している。
住宅ローンは取り扱う金融機関によって、地方公共団体や旧・住宅金融公庫(現、住宅金融支援機構)などの公的ローンと、都市銀行や信用金庫などの民間ローンに分けられる。融資が長期にわたるために貸倒れリスクが大きいこともあり、日本では住宅金融公庫など公的ローン主導で住宅ローンが普及してきた経緯がある。しかし、公的金融が民業を圧迫しているとの批判を受け、2001年(平成13)、当時の小泉純一郎政権は住宅金融公庫による直接融資の段階的縮小を決定。2003年には住宅金融公庫にかわって、民間金融機関が最長35年間、固定金利で住宅取得資金を融資する新型住宅ロ―ン(2004年12月から「フラット35」)が誕生し、2006年度には住宅金融公庫が直接個人へ融資する制度はなくなった。
日本の住宅ローン残高は2023年(令和5)3月末時点で216兆円に達している。住宅ローンの元利金の返済を受ける権利(債権)を裏づけに発行される証券は住宅ローン担保証券(RMBS:Residential Mortgage-Backed Securities)とよばれ、世界で広く取引されている。