経済成長著しいブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ共和国の5か国をさす造語。5か国の英語の頭文字をとってBRICS(ブリックス)とよばれる。アメリカの証券会社ゴールドマン・サックスのエコノミストであったジム・オニールJim O'Neill(1957― )が2001年、投資家向けレポートで21世紀は巨大人口を抱える国々が高い成長を遂げると予測し、これを基にブラジル、ロシア、インド、中国の4か国の総称としてBRICs(sは複数形)と命名した。2011年には、南アフリカ共和国が加わりBRICSとなった。5か国で世界人口の約4割強、世界の国土の約3割、世界の国内総生産(GDP)の4分の1を占める。ゴールドマン・サックスは2050年には、国内総生産(GDP)で中国がアメリカを抜いて世界1位となり、インドが3位、ブラジルが5位、ロシアが6位になると予測しており、BRICSは有力な投資先、人件費などが安い世界の工場地帯、巨大な消費地、豊富なエネルギー・資源を埋蔵する資源国として注目されている。
BRICS5か国は欧米主導の国際秩序や外交関係に対抗するため、2009年に初の首脳会議を開き、経済・外交・環境面などで協調する外交グループを形成。2014年、第二次世界大戦後の世界経済・国際金融を支えてきた国際通貨基金(IMF)・世界銀行(国際復興開発銀行)体制とは一線を画す、新開発銀行(BRICS銀行)の設立を決め、新興・途上国のインフラ整備などへの金融支援を始めた。2023年には、エチオピア、エジプト、イラン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)の新規加盟で合意、BRICS5か国を中心にグローバルサウスとよばれるこれら新興諸国を加えた外交グループ「BRICS+(プラス)」を誕生させた。脱米ドル・自国通貨の利用拡大、共通通貨の導入などを目ざしている。しかし、欧米との関係では加盟国間に立場の違いがあるほか、中東紛争やインドと中国がカシミール国境問題で対立するなど、かならずしも一枚岩とはいえず、加盟国増で意思決定がむずかしくなっている。