硬骨魚綱スズキ目アジ科アジ亜科に属する海水魚。新潟県佐渡島(さどがしま)以南の日本海沿岸、津軽(つがる)海峡以南の太平洋沿岸、小笠原(おがさわら)諸島、南西諸島、台湾、ハワイ諸島、ケニア、チャゴス諸島などインド洋、太平洋に広く分布する。体は楕円(だえん)形で、側扁(そくへん)する。体の背外郭は腹外郭よりもやや強く湾曲する。頭の前部背縁はわずかに曲がる。吻(ふん)はすこし角張り、吻長は眼径よりも著しく長い。脂瞼(しけん)(目の周囲や表面を覆っている透明の膜)はほとんど発達しない。上顎(じょうがく)は伸出できる。上顎の後端は瞳孔(どうこう)の前縁下方に達する。成魚では口唇は肉厚。上下両顎に絨毛(じゅうもう)状の狭い歯帯があり、成長するにつれて退縮する。鋤骨(じょこつ)(頭蓋(とうがい)床の最前端にある骨)に菱形(ひしがた)の歯帯がある。鰓耙(さいは)は上枝に8~10本、下枝に20~23本。背びれは2基で、1背びれは8棘(きょく)、第2背びれは1棘28~31軟条。臀(しり)びれは1棘24~26軟条で、前方に2本の遊離棘がある。第2背びれと臀びれの前部の軟条は伸びるが、頭長より短い。側線は緩く湾曲し、第2背びれの第15~19軟条下に達した後、体側の中央を後方に向かって直走する。直走部の長さは湾曲部と同長あるいは短く、湾曲部のおよそ80~100%。稜鱗(りょうりん)(鋭い突起を備えた肥大した鱗(うろこ)。一般には「ぜんご」「ぜいご」ともいう)は小さく、19~31枚。胸部の腹面に無鱗域があり、後端は腹びれの基部を越えない。無鱗域と胸びれの基底との間に広い有鱗帯がある。体は背側面では銀色で、黄銅色や緑青色を帯び、腹側面では淡色。成魚では体側に、側線を挟んで上下に数個の、中央部が黒い楕円形の黄色斑(はん)がある。鰓蓋上端に黒色斑紋があるが、不鮮明な個体もいる。第2背びれと臀びれの前突出部は緑灰色、胸びれは淡色。尾びれは暗青色で後縁は黒い。礁湖やサンゴ礁の外縁の水深50メートル以深に2~12尾ほどの小さい群れですむ。成魚は沖合いの深いところや島嶼(とうしょ)を好む。砂中にいる甲殻類や魚類を食べ、最大全長は約70センチメートルになる。釣り、定置網、延縄(はえなわ)などで漁獲され、刺身、塩焼き、フライなどにするとおいしい。
本種は胸部の無鱗域が腹びれの基部を越えないこと、背びれと臀びれの軟条数などでクロヒラアジF. ferdauに似るが、クロヒラアジは眼径と吻長がおよそ同長であること、体側面に黄色斑がないが、暗色の横帯があることなどで本種と区別できる。
本種とクロヒラアジは、以前はヨロイアジ属Carangoidesに入れられていたが、魚類研究者の木村清志(せいし)(1953― )らが、2022年(令和4)のDNAの分析と形態の観察によって、これら両種に対して古い属名のFerdauiaを復活させ、同年、それにナンヨウカイワリ属の新和名を提唱した。