食品サービス業界の一業態。ファストフードと並んで1970年代にアメリカから導入され、外資主導に日本の食品メーカー、商社、小売商などの資本が追随する形で、日本のモータリゼーションの進展とともに、飲食業に経営革新をもたらした。当初、自動車交通に便利な都市郊外に立地が進み、家族だんらんで食事が楽しめる場をチェーン店舗網の展開を通じて提供したことから「郊外型ファミリーレストラン」とよばれた。
農林水産省の「外食産業に関する基本調査結果」(2009年6月)では、ファミリーレストランは、来客1人当りの消費金額700円以上1500円未満、料理提供時間おおよそ3~10分と定義されており、ファストフード(同700円未満、おおよそ3分未満)とカジュアルレストラン(同1500円以上2000円未満、おおよそ3~10分)の中間に位置づけられている。また、外食産業の業界団体である一般社団法人日本フードサービス協会では、ファミリーレストランをイートイン中心、食事中心、客単価中程度、客席数は比較的多いと定義しており、食事中心の業態のうち、ファストフードとディナーレストランの中間に位置づけている。
なお、現在、「経済センサス」などの政府公式統計に用いられる日本標準産業分類(2013年10月改定)では、ファミリーレストランは大分類「宿泊業、飲食サービス業」、中分類「飲食店」、小分類「食堂、レストラン(専門料理店を除く)」、細分類「同上」に分類されている。つまり、ファミリーレストランのみを対象とする分類は存在せず、政府公式統計でとらえることはできない。
日本フードサービス協会会員社を対象にした「外食産業市場動向調査」(2024年1月)によると、2023年(令和5)5月に新型コロナウイルス感染症(COVID(コビッド)-19)の感染症法上の位置づけが「5類」に移行したのに伴って、外食需要が回復基調に向かい、2023年の外食産業全体の売上金額は前年比114.1%、2019年比107.7%となった。しかし、業績回復が顕著な業態はテイクアウトとデリバリーを中心とするファストフードで、ファミリーレストランの2023年の売上金額は前年比117.5%を記録したが、2019年比では98.9%と、ほかの店内飲食主体の業態と並んで回復基調にあるものの、新型コロナウイルス感染症流行前の水準には戻っていない。店舗数でみても、2023年は前年比98.6%、2019年比では91.5%と低調な状況にある。
同調査で長期的な趨勢(すうせい)をみると、ファミリーレストランは1990年代まで売上金額、店舗数とも増加傾向が続いていたが、2000年代に入って以降、横ばいないし減少傾向に転じていることがわかる。その背景には、多様な専門店型レストランの台頭による総合型ファミリーレストランの魅力の低下、世帯の形態が核家族中心から単身世帯中心に変化することによる消費者の外食需要の変化、低価格業態の成長による価格競争の激化などによって、ファミリーレストラン市場自体が成熟化し縮小傾向に向かったことがあげられる。そのため、ファミリーレストラン業界はもともとフランチャイズ・チェーン方式を主体にした大手グループの下で寡占化が進展していたが、その傾向にさらに拍車がかかっている。主要なグループとしては、すかいらーくグループ(主要なチェーンブランドはガスト、バーミヤン、ジョナサン、藍屋(あいや)、夢庵(ゆめあん)など)、サイゼリア、ロイヤルホールディングス(同、ロイヤルホスト、シズラーなど)、セブン&アイ・フードシステムズ(同、デニーズ)、ゼンショーホールディングス(同、すき家、ココス、ビッグボーイ、華屋与兵衛(はなやよへい)など)、安楽亭傘下のアークミール(同、ステーキハウスフォルクス、ステーキのどんなど)などがあげられる。
ファミリーレストラン業界では、市場の成熟化に対応するために、各社それぞれの経営資源に応じて、グループ内での多様な専門型チェーンの展開や、セントラル・キッチン方式(中央集中調理方式)による徹底した効率化に取り組んでいる。そのほかに、店内調理方式の採用による魅力の向上、クーポン券やポイントの発行によるリピート顧客の獲得・維持、顧客の健康・安全志向に対応するための人工着色料や添加物の廃止、有機野菜や有機米の導入、独自調達食材や季節性・地域性などを訴求したメニューの比較的短い期間での入れ替え、一部商品の通信販売による顧客層の拡大、海外市場での展開などを進めている。