預けたまま長期間お金の出し入れがなく放置された預貯金。休眠口座、睡眠貯金などともよばれる。日本では、休眠預金等活用法(「民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律」平成28年法律第101号)で、2009年(平成21)1月1日以降10年以上出し入れがなく、残高1万円未満の預貯金、および残高1万円以上で預金者らと連絡がとれない預貯金と定義した。普通預金、定期預金、積立定期預金などが該当し、外貨預金、財形貯蓄などは対象外。休眠預金となった後も、慣例上、金融機関は預金者や遺族の要請があり、通帳、カード、身分証明書などの提示があれば、預金残高と利子の払い戻しに応じている。なお休眠預金とは別に、旧郵便貯金法で、2007年10月の郵政民営化前に預けた定期性の郵便貯金(定期・定額・積立貯金など)は満期後20年2か月間払い戻し請求がないと睡眠貯金になると定義されており、一定期間を経て自動的に国庫に入って貯金者の財産権は消滅する。
毎年、休眠預金は1400億円程度が発生している。また、2007~2022年度(令和4)までに権利が消えた睡眠貯金は2186億円に達する。
海外では、休眠預金の最後の出し入れから3~10年経つと、アメリカでは州へ、カナダでは中央銀行へ、オーストラリアでは政府へ管理が移る。イギリス、韓国、アイルランドなどは休眠預金を社会福祉、失業・貧困、中小企業対策に活用している。
かつて日本では権利行使のない休眠預金は事実上、金融機関の利益となっていたが、2016年に議員立法で休眠預金等活用法が成立し、2019年度から休眠預金等の公益活用が始まった。休眠預金等をまず預金保険機構へ移し、政府が定める全国唯一の指定活用団体である一般財団法人日本民間公益活動連携機構が中心となって、地域の実情に詳しい資金分配団体を通じ、全国のNPO法人やボランティア団体などへ交付する。休眠預金を財源として助成、出資、貸付などの形で交付し、(1)難病の子を抱える家庭や貧困児童への支援、(2)障害者や生活困窮者への支援、(3)地域活性化事業、(4)社会課題の解決を目ざすスタートアップ企業等の資金繰り、などに活用されている。交付金額は2019~2023年度で約278億円。休眠預金が公益活動の資金源となった後も、預金者が払い戻し要請する場合などに備え、預金保険機構は2022年度末時点で、約2143億円の準備金を積み立てている。