インターネットを通じて楽曲や音楽番組などの音声デジタル情報を配信し、スマートフォンや携帯音楽プレーヤーなどの再生機器で聴けるようにするサービスの総称。1990年代末から、インターネット上で音声デジタル情報を、大容量、圧縮、高速、高音質でやりとりする技術が相次いで開発され、可能となった。とくに2000年代初頭に、アップル社が携帯型プレーヤーのiPod(アイポッド)を発売し、音楽配信サービスを始めたことで急速に普及した。
音楽配信サービスは、デジタル音声をスマートフォンなどで受信しながらほぼ同時に再生するストリーミング(逐次再生)方式と、情報をいったんパソコンやスマートフォンなどに取り込んだうえで再生するダウンロード方式に大きく分けられる。ストリーミング方式のうち、定額料金を支払えば一定期間登録楽曲を無制限に聴くことができるサブスクリプション(通称サブスク)型サービスの利用が伸びている。音楽配信サービスは当初、ダウンロード方式が中心であったが、2016年以降、サブスク型を中心にストリーミング方式が世界の主流となった。ストリーミング方式は、海賊版などに複製されにくいが、通信料がかさむ欠点がある。ダウンロード方式はいったん取り込めば、ネットがつながっていない環境でも利用できるが、取得・再生までに時間がかかり、海賊版などに複製されやすい難点がある。
国際レコード産業連盟(IFPI:International Federation of the Phonographic Industry)によると、世界の音楽配信サービスの売上高は2014年にCD・レコードなどの販売額を上回り、2023年に202億ドル(ストリーミング方式193億ドル、ダウンロード方式9億ドル)に達し、レコード産業全体(著作権料などを含む)の約7割を占め、毎年10%前後の伸びを続けている。日本では、音楽事業者の権利許諾などの遅れで音楽配信サービスの普及が遅れていたが、一般社団法人日本レコード協会によると、2023年(令和5)の売上高は前年比11%増の1164億円(うちストリーミング方式1056億円、ダウンロード方式102億円)となった。音楽配信サービスの世界的な普及で、CDなどの音楽ソフトの売上げは大きく落ち込んだ。
主流のサブスク型音楽配信サービスの利用料は、1か月当り1000円前後。学生割引き、家族割引き、無料試聴期間などを設けるサービスが多い。ほとんどのサービスが、楽曲の検索機能、好みの曲を再生順などで集めるプレイリスト作成機能のほか、嗜好(しこう)や視聴履歴などを分析して自動的に音楽配信する機能などを提供している。ダウンロード方式の料金は、シングル1曲数百円、アルバムで2000円前後。サービス提供会社は世界最大手のスポティファイ(Spotify)のほか、アップル社のアップルミュージック、グーグル社のユーチューブ・ミュージック、アマゾン・ドット・コム社のアマゾン・ミュージックなどがある。日本では、レコード会社とNTTドコモが共同運営するレコチョク、エイベックス・ファンマーケティング社とサイバーエージェント社などが共同出資したAWA(アワ)、LINE(ライン)社のLINEミュージック、USEN(ユーセン)-NEXTホールディングス社のUSEN MUSICなどがある。大半のサービスの登録楽曲数は、それぞれ1億曲を超える。
音楽配信サービスの普及で、世界的に海賊版の横行や、音楽番組内でのフェイクニュース(虚偽情報)などの発信が問題となった。日本の著作権法では、違法と知りながら海賊版を繰り返し利用すると、2年以下の懲役または200万円以下の罰金を科される。ユネスコ(国連教育科学文化機関)はサービス提供者に、虚偽情報などには警告を発したり、警告ラベルを張ったりするよう指針で促している。