消費税率を段階的に10%まで引き上げ、増収分を社会保障の財源にあてることをうたった法律。民主党政権下の2012年(平成24)、民主、自民、公明の3党の賛成で成立した(その後2014年、2016年などたびたび改正)。正式名称は「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律」(平成24年法律第68号)で、「社会保障と税の一体改革法」ともよばれる。先進国で最悪の財政赤字に歯止めをかけ、社会保障の安定財源を確保する目的で、施行当時5%(うち地方消費税率1.0%)だった消費税率を2014年4月から8%(同1.7%)へ、2019年(令和1)10月(施行当時の予定は2015年10月)には10%(同2.2%)へ引き上げた。また、2019年10月から軽減税率を導入し、飲食料品(酒類・外食除く)と新聞(週2回以上発行の定期購読契約新聞)に適用。複数税率が併存するなか、事業者の消費納税額を正確に把握するため、2023年10月から、適格請求書(インボイス)等保存方式を導入した。
消費増税法は当初10%への引上げ時期を前述のように2015年10月とした。ただし同法附則第18条に、経済状況が好転しなければ増税を見送るとの景気条項(2015年に廃止)があり、内閣総理大臣安倍晋三(あべしんぞう)は2014年11月、2四半期連続でマイナス成長だったことを踏まえ、税率10%への引上げを2017年4月に延期して衆議院を解散した。また、参議院選挙を控えた2016年6月、安倍は「世界経済は大きなリスクに直面している」として、引上げ時期を2019年10月に再延期(決定は2016年11月)。さらに2017年9月には消費増税法の目的に子育て支援を加え、2020年までの基礎的財政収支(プライマリーバランス)黒字化目標を放棄すると表明し、衆議院を解散した。このように消費増税法の内容は選挙目当てでたびたび変更され、財政健全化の時期は先送りされている。
消費増税法には、消費者の負担軽減のため、住宅ローン減税の延長、自動車取得税(地方税)の廃止(2019年10月)などが盛り込まれた。また、消費増税法と同時に社会保障制度改革推進法(平成24年法律第64号)が成立し、年金・医療・介護・少子化対策などの社会保障制度改革を、有識者で構成する「社会保障制度改革国民会議」で議論することとした。このほか高齢者資産の若年層への早期移転を促す相続税法改正(2015年1月実施)、高所得者優遇を是正する最高税率の引上げ(課税所得4000万円超は45%を適用)を柱とする所得税法改正(2015年1月実施)、基礎年金の国庫負担割合を恒久的に2分の1にする年金機能強化法施行(2014年4月実施)、厚生年金と共済年金を一元化する被用者年金一元化法施行(2015年10月実施)、認定こども園を拡充する子ども・子育て支援3法施行(2015年4月)なども実施された。