一般ドライバーが自家用車などで利用客を運ぶ有料サービス。もともと自動車や自転車の相乗りを意味したが、情報技術(IT)の普及で、自動車の所有者・運転者と自動車に乗りたい利用者を効率よく結びつけるサービスとして世界的に普及した。利用希望者がスマートフォン(スマホ)などのアプリケーション(アプリ)を通じて配車を依頼すると、スマホ端末のGPS(全地球測位システム)機能を通じて現在位置が発信され、近くを走っているライドシェア提供ドライバーを呼び出し、有料で運んでもらう仕組みである。迅速・手軽に自動車を利用できるうえ、一般ドライバーにとっては、あいた時間などで金銭を稼ぐことができる。スマホで行き先指定や電子決済ができるため、ことばの通じない外国人でも利用しやすい。使っていない車や家などの資産を、インターネットを介して必要な人に使ってもらうシェアリング・エコノミー(共有型経済)の一形態でもある。
自動車のライドシェアは、2010年にアメリカのウーバー・テクノロジーズ社(Uber Technologies,Inc.)がサービスを開始し、世界約70か国・地域でライドシェアを提供。中国の滴滴出行(ディディ、Didi Chuxing Technology Co.,Ltd.)、シンガポールのグラブ(Grab Holdeings Ltd.)などライドシェアを国際的に提供する事業者が相次いで生まれた。調査会社グローバルインフォメーションは世界のライドシェア市場が2024年に476億ドルの規模に達し、2029年まで年率10%超の成長を続けると試算している。北・中米、中国、東南アジアの一部などは、ドライバーや運行の管理をライドシェア事業者が担って国は関与しないTNC(Transportation Network Company)方式をとり、ヨーロッパ各国は事業者に各種の業務を課すとともに、ドライバーにライドシェア免許の取得や登録などを義務づけるPHV(Private Hire Vehicle)方式をとっている。
日本では、一般ドライバーによるライドシェアは道路運送法の「白タク行為(白ナンバー自動車による無許可タクシー営業)」にあたるとして原則禁止してきたが、2006年(平成18)、過疎地の住民の足を確保する目的で、交通空白地有償運送制度として解禁。2024年(令和6)には、深刻なタクシーの運転手不足を補うため、東京、神奈川、愛知、京都などの都府県内の都市部や観光地で、地域・時間帯限定で日本版ライドシェアを開始した。日本版は既存タクシー会社が運営主体となり、運賃もタクシーと同等にするなど、ライドシェアの部分解禁ととらえることができる。政府はタクシー会社以外が運営し、需給に応じて運賃を決める全面解禁を検討している。