拒まれているのに執拗(しつよう)につきまとうなどのストーカー行為を規制・処罰する法律。正式名称は「ストーカー行為等の規制等に関する法律」(平成12年法律第81号)。2000年(平成12)11月に施行された。ストーカー法ともいう。ストーカー行為を、恋愛などの好意感情を満たすため、または、それが満たされなかったことへの恨みから、同じ人に「つきまとい等」を繰り返すことと規定。「つきまとい等」として、つきまとい、待ち伏せ、住居等への押しかけ、うろつき、監視行為、面会・交際の要求、乱暴な言動、無言・連続電話、連続ファクシミリ送信、汚物などの送付、名誉の毀損(きそん)、性的羞恥(しゅうち)心の侵害などの行為を列挙して規制対象としている。2013年の法改正ではメールの連続送信を規制対象に加え、2016年の法改正ではツイッターなどのSNS(会員制交流サイト)の連続送信やブログへの執拗な書き込みなど電気通信を使ったつきまとい行為(ネットストーカー)も広く規制対象とした。警察は、被害者の申し出を受け、違反行為が繰り返されるおそれがあると確認した場合、行為の禁止を警告できる。警告に従わない場合、都道府県公安委員会は禁止命令を出す。ただ緊急性がある場合、都道府県公安委員会は警告を経ずに禁止命令を出すことが可能。ストーカー行為は当初、親告罪であったが、2016年の法改正で被害者の告訴が要らない非親告罪に変更された。罰則は1年以下の懲役または100万円以下の罰金。禁止命令にもかかわらずストーカー行為を続けた場合には、2年以下の懲役または200万円以下の罰金となる。被害者には、携帯型緊急通報装置や防犯カメラ等を貸し出すほか、あらかじめ登録した電話番号から110番通報された場合、警察官へ必要情報を円滑に指令する「110番通報者登録制度」や、加害者の危害から安全な場所へ一時避難する際の「宿泊費負担制度」などの援助制度も盛り込まれている。ただストーカー規制法施行以降も、警察に被害を届けながらストーカー行為による死傷事件が後を絶たず、そのたびにメールやSNS送信を規制対象に加え、罰則を強化するなどの法改正が繰り返されている。このため「情報通信技術の進展に法整備が追いついていない」「警察の対応がいつも後手に回っている」などの批判が弁護士会や報道機関から出ている。
[矢野 武]