月とその周辺環境を探査する宇宙機。
月は地球の衛星で直径は3474キロメートル、質量は地球の81分の1で地球中心から月の中心までの平均距離は38万4403キロメートルである。月の軌道は円に近い楕円(だえん)形で自転周期は27.32日である。地球の周りを回る公転周期と完全に同期しているため、地球からは月の裏側を直接観測することはできない。ソビエト連邦(ソ連)の無人探査機ルナ2号は1959年に月に接近して月面に衝突した人類初の月探査機となった。月の裏側はルナ3号によって初めて撮影された。ルナ9号は初めて月面に軟着陸した探査機である。その後ルナ16、20、24号は月の鉱物資料を地球に持ち帰った。
アメリカは月への無人探査機としてレンジャー計画を開始し、1961年から1965年にかけて9機の探査機を打ち上げた。続くサーベイヤー計画では、1966年から1968年にかけて7機が打ち上げられ、月への軟着陸も成功させている。アポロ11号のニール・アームストロングとエドウィン・オルドリンEdwin Eugene Aldrin Jr.(1930― )は、1969年7月20日に人類で初めて月面を歩き、多くの月の鉱物資料を持ち帰った。初めてのロボット月面車は1970年のルノホート1号(ソ連)である。1960年代なかばから1970年代なかばにかけては、世界で65回の月面着陸が行われた。とくに1971年は1年間で10回も行われたが、1976年のルナ24号を最後に月面着陸探査は中断してしまった。それ以降、ソ連は金星と国際宇宙ステーション(ISS)を、アメリカは火星およびそれ以遠を目ざすようになった。
日本は1990年(平成2)「ひてん」を月周回軌道に投入したが、通信機器の故障で探査はできなかった。2007年(平成19)に「かぐや」を月周回軌道に投入して1年8か月にわたって観測を続け、2009年に月面に衝突してミッションを終了した。
ESA(イーサ)(ヨーロッパ宇宙機関)は2003年に小型で安価な月周回探査機スマート1号を打ち上げ、約2年間にわたって観測を行った。
中国は、2007年以降に月周回衛星「嫦娥(じょうが)」1号、2号、3号を打ち上げ、3号は月面に軟着陸して月面探査機「玉兎(ぎょくと)号」を切り離した。
インド宇宙研究機関(ISRO)は、2008年に月周回衛星「チャンドラヤーン」1号を打ち上げたが通信が途絶し、10か月でミッションを終了した。
今後の月探査計画は、アメリカでは連邦航空局(FAA)が民間企業ムーン・エクスプレス社に対して、2017年の月面探査計画の許可を与えた。日本では宇宙航空研究開発機構(JAXA(ジャクサ))が無人月探査機「SLIM(Smart Lander for Investigating Moon)」を2019年度の後半に打ち上げると発表した。韓国は2020年に独自開発の月軌道船と着陸船を打ち上げる計画を発表している。
[森山 隆]