証券取引所に上場された投資信託で、上場株式などと同様に市場で売買される。上場投信と略称され、英語の頭文字をとってETFともいう。日経平均株価や東証株価指数(TOPIX(トピックス))などとの連動を図る指数連動型ETFが代表的な存在であるが、今日では主要業種別、金価格、東証REIT(リート)(不動産投資信託)指数、海外株価指数などに連動する商品も存在している。従来の契約型投資信託では、基金(ファンド)の純資産額を投資家の口数で除した売買基準価額によって取引が執行されていたため、資産価値と取引価格とが基本的に一致していた。しかし、ETFにあっては、市場における需給関係が価格形成に影響を与えるため、両者はかならずしも一致しない。
指数連動型ETFは、相対的に運用コストが低く、信用取引や対象株価指数などとの間で裁定取引(価格差を利用して、高いほうを売り、安いほうを買うことにより値鞘(ねざや)を稼ぐ取引。デリバティブの基本戦略)を行うことも可能であり、個人投資家が少額の資金で多様な投資戦略を実践するための道筋を開いている。アメリカで発展した投資信託形態であるが、日本においては、証券市場への個人資金のシフトを促す目的で2001年(平成13)7月に本格導入された。
ETFの組成には、現物拠出によるものとリンク債を用いるものとがある。現物拠出型では、証券会社などの指定参加者が現物株バスケット(市場で買い付けた株式の集合)を運用会社に拠出する。運用会社はそれをもとにETFを設定し、ETFの持分(もちぶん)を示す受益証券を指定参加者に受け渡す。この受益証券が証券取引所に上場され、投資家の売買に供される仕組みである。現物株バスケットとETFは相互に交換できるため本質的な価値は同一となり、価格の連動性が維持されるのである。
一方、リンク債型は、指定参加者が運用会社に資金を拠出し、ETFが設定される。拠出された資金は、株価指数などに連動するリンク債(指数などとの連動を目的とする債券)に投資されることで、ETFとリンク債とが連動し、株価指数との連動性も保たれることになる。リンク債は、その償還価格が指数などの動きと連動することが発行者によって保証されている半面、裏付けとなる現物資産をもたず、発行者の信用リスクを伴う。日本では、これまでリンク債型の指数連動型ETFは存在しない。ただし、信用力のある金融機関が指数との連動を保証する上場投資証券(ETN:exchange traded note)は、ETFと同様に証券取引所で売買されている。
日本のETFは発足以来、趨勢(すうせい)的には増加傾向をたどり、投資信託協会によると、2023年(令和5)末時点のファンド数は284本、純資産総額は74兆9393億円に達し、過去最高水準を更新している。ファンド数の拡大は、ファンド間の競争促進や選択肢の拡大という面で投資家にメリットを与える。ただ、指数連動型という商品形態はインデックス・ファンド(指標とする対象株価指数に連動して基準価額が値動きするように運用を行う投資信託)の一種であることを意味する。したがって投資家としては、トラッキング・エラー(目標とする指数との連動性がずれること)やシステマティック・リスク(分散投資では回避できない市場全体のリスク)などの存在を認識し理解することが必要である。なお、2010年12月以降は日本銀行によるETFの買付けが行われ、2020年にかけて急拡大するなど、ETFは金融政策のツールとしても注目を集めた。