海洋政策を一元的・総合的に実施し、日本の沿岸200海里(約370キロメートル)までの排他的経済水域での海洋権益を守ることを目的として、2007年(平成19)4月に成立した法律(平成19年法律第33号)、同年7月に施行。
国連海洋法条約が発効した1994年以降、海に面した国には排他的経済水域が認められた。同条約を受けて、中国や韓国などは海洋政策を強化し、基本法や基本戦略を進めてきたが、日本は海洋政策を所管する省庁が6省庁にまたがっていたこともあり、総合的な海洋政策がなされず、漁業問題をめぐる韓国、中国、台湾、ロシアに対する対応も十分とはいえなかった。その後、東シナ海でのガス田開発をめぐる中国との対立などを契機として、海洋政策の新たな制度的枠組みの構築が必要とされ、2007年に超党派の議員立法で制定されたものが本法である。また、食料、資源・エネルギーの確保や物資の輸送、地球環境の維持等、海が果たす役割が増大していることに加えて、海洋環境の汚染、水産資源の減少、海岸侵食の進行、重大海難事故の発生、海賊事件の頻発等、さまざまな海の問題が顕在化したという背景もある。
本法は、海洋に関し、海洋の開発および利用と海洋環境の保全との調和、海洋の安全の確保といった「基本理念」を定め、国、地方公共団体、事業者および国民の責務を明らかにしているほか、海洋に関する基本的な計画(海洋基本計画)の策定、その他海洋に関する施策の基本となる事項について定めている。
本法は、政府に対して、海洋に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、海洋基本計画を定めることを義務づけている。同計画では、「海洋に関する施策についての基本的な方針」「海洋に関する施策に関し、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策」「海洋に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項」について定めるものとしている。同計画は、おおむね5年ごとに見直しを行い、必要な変更を加えることとされており、これまで、2008年に第1期海洋基本計画、2013年に第2期海洋基本計画、2018年に第3期海洋基本計画、2023年(令和5)には第4期海洋基本計画が閣議決定された。第4期海洋基本計画では、海洋に関する施策についての基本的な方針として、(1)「総合的な海洋の安全保障」の基本的な方針、(2)「持続可能な海洋の構築」の基本的な方針、(3)着実に推進すべき主要施策の基本的な方針(海洋の産業利用の促進、科学的知見の充実、海洋におけるDX〈情報インフラ等のデジタルトランスフォーメーション〉の推進、北極政策の推進、国際連携・国際協力、海洋人材の育成・確保と国民の理解の増進、新型コロナウイルス等の感染症対策)が定められている。
本法に基づいて、海洋に関する施策を集中的かつ総合的に推進するため、内閣総理大臣を本部長とする「総合海洋政策本部」が内閣に設置された。
また、本法の制定と同時に成立した海洋構築物安全水域設定法により、排他的経済水域内の掘削施設や人工島の周囲500メートル以内に安全水域を定め、水域内への立ち入りを制限できるようになった。