正式名称は「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」(WHO Framework Convention on Tobacco Control:略称「WHO FCTC」)という。「たばこの使用およびたばこの煙に晒(さら)されることの広がりを継続的かつ実質的に減少させるため、締約国が自国においてならびに地域的および国際的に実施するたばこの規制のための措置についての枠組みを提供することにより、たばこの消費およびたばこの煙に晒されることが健康、社会、環境および経済に及ぼす破壊的な影響から現在および将来の世代を保護すること」を目的として、2003年5月21日に世界保健機関(WHO)の第56回総会において全会一致で採択され、2005年2月27日に発効した条約である。日本は、2004年(平成16)6月に受諾した。
本条約は、たばこの広告・販売促進および後援活動の包括的禁止、たばこのパッケージの3割以上を割いての健康被害の警告表示、公共の場所や職場における受動喫煙の防止対策、国内法によって定める年齢または18歳未満の者のたばこ購入防止対策、たばこに対する課税引上げの検討、喫煙の健康に与える悪影響についての教育・啓発等の実施などを、締約国に対して義務づけている。
本条約に基づいて「締約国会議」(COP)が2006年より開催されている。COPは、本条約第7条により、規定の実施のための指針(ガイドライン)を提案することとされているが、これまで、2007年のCOP第2回会合において「たばこの煙に晒されることからの保護に関するガイドライン」が採択されたほか、2008年のCOP第3回会合では「公衆衛生政策のたばこ産業の利益からの擁護に関するガイドライン」「たばこ製品の包装およびラベルに関するガイドライン」および「たばこの広告、販売促進および後援に関するガイドライン」が採択された。2010年のCOP第4回会合では「たばこへの依存およびたばこの使用の中止についてのたばこの需要の減少に関する措置に関するガイドライン」「教育、情報の伝達、訓練および啓発に関するガイドライン」および「たばこ製品の含有物に関する規制に関するガイドライン」(2012年のCOP第5回会合および2016年のCOP第7回会合で修正)が、COP第5回会合では「たばこ製品についての情報の開示に関する規制に関するガイドライン」が、2014年のCOP第6回会合では「たばこの需要を減少させるための価格および課税に関する措置に関するガイドライン」が、それぞれ採択された。
また、COP第5回会合では「たばこ製品の不法な取引の根絶に関する議定書」が採択された。2018年6月27日、本議定書の締結国数が41か国に達し、発効要件(40か国の締結)を満たしたため、同議定書は同年9月25日に発効した。2023年8月時点での締約国は183か国。