一般的に学校設置者の顧問弁護士とは別に、いじめや学校事故をはじめ、学校運営に関する法律問題の相談を専門的に担当し、学校に対して助言などを行う弁護士をさす。
スクールロイヤーは、スクールカウンセラーなどと異なって法令上定義されているわけでないことから、さまざまな考え方が存在している。日本弁護士連合会が2018年(平成30)に発表した意見書では、スクールロイヤーを「学校現場で発生する様々な問題に対して、裁判になってから関わるのではなく、むしろトラブルが予測されそうな段階から、学校の相談相手としての立場で、子どもの最善の利益の観点から、教育や福祉、子どもの権利等の視点を取り入れながら継続的に助言する弁護士」と定義していた。しかし、2024年(令和6)に発表した意見書では「(学校の)助言・アドバイザー業務又は代理・保護者との面談への同席等の業務を担う専ら教育行政に関与する弁護士」であると定義しており、両者はかなり異なっている。
実際にはいろいろなタイプのスクールロイヤーが存在しており、大半は教育委員会や管理職教員から相談を受けて学校に法的な助言などを行っている弁護士であるが、それ以外にも、教育委員会の職員として勤務する弁護士や、教員や部活動指導員として実際に学校で勤務する弁護士などもいる。また、公立学校だけでなく国立・私立でもスクールロイヤーを導入している学校が存在する。
スクールロイヤーは業務内容も多様で、文部科学省の調査によれば、いじめや保護者対応に関する相談案件が大半だが、それ以外にも学校事故、虐待、児童生徒の非行・問題行動、教職員の懲戒、個人情報、著作権に関することなど、さまざまな相談を受けている。また、法律相談だけでなく、文書の作成を手伝ったり、保護者面談に同席したり、教職員に対する研修の講師や、学校を訪問していじめ予防授業や法教育活動などの児童生徒に対する出張授業を担当したりするスクールロイヤーも存在する。
スクールロイヤーには教育や学校、子どもの権利や児童福祉などに関する法律知識だけでなく、学校現場の実情、日本の学校制度、教師・子ども・保護者の三者関係、教育学の知見など教育に関する幅広い見識が必要とされる。しかし、実際にはそのような見識をもつ弁護士は非常に少なく、人材が不足している。また、スクールロイヤーは学校側が相談できる弁護士だが、弁護士法で規定されている利益相反行為の禁止の観点から、子ども・保護者側は原則としてスクールロイヤーに相談できないため、かならずしも中立的な立場ではない点も問題視されている。さらに、日本弁護士連合会や文部科学省は、教員の保護者対応の負担を軽減する目的で、スクールロイヤーを学校側の代理人として保護者との交渉や面会などに活用することを推奨しているが、スクールロイヤーに相談できるのは原則として教育委員会や管理職教員であるため、スクールロイヤーが現場の一般教員の利益を考慮せずに子どもや保護者と対立するおそれも懸念されている。