硬骨魚綱ハダカイワシ目ハダカイワシ科に属する海水魚。東北地方沖から駿河(するが)湾、豊後(ぶんご)水道、東シナ海、台湾、ジャワ島など西太平洋とインド洋に分布する。体は細長く、体高は体長のおよそ6分の1。頭は大きく、頭長は体長の4分の1よりすこし短い。吻(ふん)はとがって短い。目は小さく、眼径は吻長におよそ等しい。背びれは腹びれ基底(付け根の部分)より後方から始まり、背びれ基底長は臀(しり)びれ基底長より短い。背びれは12~16軟条。臀びれは14~19軟条で、背びれ基底の中央部の下後方から始まる。脂(あぶら)びれ(背びれの後方にある1個の肉質の小さいひれ)は臀びれ基底後端の上方にある。胸びれは12軟条で、著しく小さい。鰓耙(さいは)は上枝に4~5本、下枝に10~12本。体は一様に黒色。
また、発光器は種の重要な特徴である。雄雌ともに尾柄(びへい)上部発光腺(せん)SUGL(図中⑯、以下同)と尾柄下部発光腺INGL(⑰)がある。両発光腺は小さくて複数にくぎられるが、黒色素で縁どられていない。体側にあるすべての発光器は小さく、脱落しやすい。頬(ほお)に頬発光器Cp(⑥)がない。肛門(こうもん)上発光器SAO(⑫)は3個で、ほとんど直角の逆L字状に折れ曲がり、最上のものは側線の直下に位置する。胸びれ上発光器PLO(⑦)と腹びれ上発光器VLO(⑨)は側線よりもわずかに下方にある。胸部発光器PO(⑩)は5個で、4番目のものは高位にあり、体の腹縁から離れ、胸びれ基底後方にある。体側後部発光器Pol(⑭)は2個で、上のものは高位にあり、側線の直下にある。腹部発光器VO(⑪)は4個で、ほとんど同じ高さに並ぶ。尾びれ前発光器Prc(⑱)は4個で、最上のものは側線の上にある。前部臀びれ発光器AOa(⑬)は5~7個、後部臀びれ発光器AOp(⑮)は6~7個。
最大体長は約9センチメートル。水深約600~900メートルにすみ、夜間に水深100メートルまで日周鉛直移動をする。
バーナード・J・ザフラネックBernard J. Zahuranecは、2000年に頬発光器がなく、胸びれがないかきわめて小さい種をトミハダカ属Lampanyctusから分離し、それらの種に対してトンガリハダカ属Nannobrachiumを採用した。しかし2018年にレネ・ポーリン・マーティンRene Pauline MartinらはDNAと形態の分析からトンガリハダカ属を認めず、トミハダカ属に戻した。
本種は頬発光器がないことで、ミカドハダカL. regalisやヒレナシトンガリハダカL. sp.に似るが、ミカドハダカは腹びれ上発光器が側線と体の腹縁の中間付近にあることで、ヒレナシトンガリハダカは最上の尾びれ前発光器が側線の上方にあり、胸びれがないことなどで本種と区別できる。なお、本種が属するトミハダカ属の種は個体変異や地理的変異があり、いっそうの研究が必要とされている。