個人や法人などの納税者が、国や地方公共団体、認定NPO法人などに公益目的の寄付金(特定寄附金)を支出した際に受けられる納税額の軽減措置。法令上は「寄附金」と表記する。1962年(昭和37)導入。狭義には、個人の所得税を軽減する「寄附金控除」をさすが、住民税を軽減するふるさと納税(「寄附金税額控除」)や損金算入による法人住民税・法人事業税の軽減措置を含むのが一般的である。国、地方公共団体、認定NPO法人のほか、特定公益増進法人(がん研究会などの公益財団法人、日本赤十字社などの認可法人など)、特定公益信託、政党・政治資金団体への寄付金や、創業まもない新興企業(特定新規中小会社)発行の株式取得金が控除や損金算入の対象となる。その目的は、地域・教育・科学の振興、文化の向上、被災地支援、社会福祉、新興企業の育成(エンジェル税制)などの社会貢献で、寄付文化を醸成するねらいもある。入学寄付金など寄付者に特別の利益が及ぶものは適用外である。
個人が「特定寄附金」を支出したときは、「寄附金控除(所得控除)」として所得金額から差し引かれる。ただし、政党や政治資金団体への寄付金、認定NPO法人等・公益社団法人等に対する寄付金については、「寄附金控除(所得控除)」の適用を受けるか、「寄附金特別控除(税額控除)」の適用を受けるか、どちらか有利な方を選ぶことができる。
個人が支出した寄付金控除額は、その年に支出した特定寄附金額の合計額から2000円を引いた額になる。ただし、特定寄附金の額の合計額は、所得金額の40%相当額が限度となる。一般に税額控除を選んだほうが節税効果は大きいが、高額所得者の場合は所得控除を選んだほうが減税額は大きくなる。なお、寄付金控除額は所得税額の25%が上限である。
法人が支出した場合、損金算入額は国や地方公共団体への寄付については全額、特定公益増進法人・特定公益信託・認定NPO法人に対する寄付については寄付金総額もしくは定められた計算式に従って求められる特別損金算入限度額のいずれか少ない金額、その他の宗教法人や営利法人等に対するものについては、定められた計算式により求められる損金算入限度額の範囲内で損金算入される。
控除を受けるためには、原則として、受領証や証明書を添付し確定申告をする必要があるが、ふるさと納税には確定申告が不要なワンストップ特例(寄付先が五つまでの場合に利用可能)がある。なお、企業版ふるさと納税の場合には、寄付額の約3割が損金算入、最大6割が税額控除の対象となり、最大で寄付額の約9割について税負担を軽減できる。
個人の寄付金額(2020)は、世界に先駆けて1917年に控除制度を導入したアメリカが約34兆6000億円(約3200億ドル)であるのに対し、日本は約1兆2000億円にとどまる。このため日本では、個人が寄付しやすいよう寄付金控除に関する法令改正が頻繁に繰り返されている。