電波を発する通信端末機器(特定無線設備)が電波法令の技術基準を満たしていることを認証すること、また、その基準認定制度。電波法(昭和25年法律第131号)第38条に基づき、無線通信の混信や妨害を防ぎ、限られた資源である電波を効率的に利用するため、郵政省(現、総務省)が1981年(昭和56)に設けた。スマートフォンなどの携帯電話、パソコン、Wi-Fi(ワイファイ)アクセスポイントやルーターといった無線LAN(ラン)など電波を発するすべての機器が対象で、通信機器メーカーは新機種を出すたびに認証を受ける必要がある。電気通信事業法(昭和59年法律第86号)の技術基準を情報端末機器が満たしていることを認定する技術基準適合認定とあわせて、「技適」と略称される。技術基準適合証明を受けた機器には、郵便記号「〒」の入った「技適マーク」がつけられる。機器本体裏側などに印字されるほか、画面に電磁表示される場合もある。家庭などで使用する技適マーク付きの機器は、無線局への免許申請なしに使用できる。原則、技適マークのない機器の利用や技適マークのついた機器の改造は、電波法により罰せられる。
アメリカ連邦通信委員会(FCC)の技術認証(マークはFCCロゴ)や、ヨーロッパ委員会(EC)の技術適合(同CEマーク)など、主要国はそれぞれ国土の広さや建物の建築構造に応じた電波関連の認証制度をもつ。しかし、日本の技適はその閉鎖性や硬直性から日本市場の非関税障壁の象徴とされ、長く規制緩和要求の対象となった。日本政府は1980年代から1990年代にかけて技術基準項目の削減、認証手続の簡素化、審査手数料の引下げを実施。その後も認証業務の民間開放(2001)、証明機関の指定制から登録制への移行(2003)、技術基準を満たしていることを自主的に確認申請する自己確認制度の導入(2004)を実施。また、インバウンド促進のため2016年(平成28)から、外国人観光客らが持ち込んだ技適マークなしの通信機器について、欧米基準などを満たせば最大90日の利用(90日ルール)を認めた。さらに、急速なイノベーションに対応するため、2019年(令和1)11月には、技適マークなしの海外新製品について、届出だけで市場テストなどを最大180日間できるルール(180日ルール)を導入した。
なお、国境を越えたサイバー攻撃を防ぐため、技適とは別に、国際共通基準に基づくITセキュリティ評価認証制度(JISEC(ジェイアイセック):Japan Information Technology Security Evaluation and Certification Scheme、2001年開始)があるほか、経済産業省は2024年度からIoT(モノのインターネット)製品のセキュリティ適合性評価制度を始めた。これら2制度に比べ、技適はセキュリティ基準が緩く、機器の安全性を守るための最低限の基準といえる。