情報端末機器が電気通信事業法(昭和59年法律第86号)の定める技術基準を満たしていることを認定すること、また、その基準認証制度。電気通信回線に接続される電話、携帯電話、ファクシミリ、各種モデムなどが対象で、この認定を受けていない機器は電気通信回線に接続してはならない。情報端末機器のうち電波を発する機器は、電波法に定めた技術基準を満たすことを示す技術基準適合証明をも取得する必要があり、適合認定とあわせて「技適」と略称される。技術基準に合格すると機器本体や画面に「技適マーク」の表示が義務づけられる。技術基準適合認定には、民間の登録認定機関が申請された端末機器を個別に試験する「登録認定」のほか、量産品の生産体制が設計通りに確保されているかどうかを審査してその工場で生産される端末機器を一括認定する「設計認証」(電気通信事業法56条)や、他の利用者の通信を妨害するおそれが少ない端末機器を製造業者・輸入業者自らが試験する「技術基準適合自己確認」(電気通信事業法63条)がある。
技術基準適合認定は、1985年(昭和60)の電気通信事業法の施行と同時に導入されて以来、長く海外から日本市場の閉鎖性の象徴であるとして規制緩和要求の対象となってきた。日本政府は1999年(平成11)に設計認証制度を導入し、2003年(平成15)に認定機関を指定制から登録制へ移行し、認定業務を民間へ開放。さらに、2004年には自己確認制度を導入した。また、2002年以降、外国政府との相互承認協定(MRA:Mutual Recognition Agreement)が導入され、ヨーロッパ連合(EU)、シンガポール、アメリカなどの機関にも審査を認めている。
国境を越えたサイバー攻撃の増加に対応し、技適とは別に、国際共通基準に基づくITセキュリティ評価認証制度(JISEC(ジェイアイセック):Japan Information Technology Security Evaluation and Certification Scheme、2001年開始)があるほか、経済産業省は2024年度(令和6)からIoT(モノのインターネット)製品のセキュリティ適合性評価制度を始めた。技適も、2020年(令和2)に施行された電気通信事業法施行規則の改正で、認証を受けるにはアクセス制御や初期パスワード変更などの機能実装を義務化したものの、セキュリティ対策基準としては緩く、技適は安全性を守るための最低限の基準といえる。