自転車とその貸出・返却拠点(サイクルポート)を街中に数多く配置し、複数の拠点を相互に利用できるようにした交通システム。シェアサイクル、シェア自転車、自転車シェアリングともいう。環境対策、渋滞緩和、違法駐輪(放置自転車)の抑制、観光振興などの効果があるとされ、多くの都市が公共的な移動手段の一つに位置づけている。利用登録をしたうえで、専用カードなどを使い、サイクルポート、自転車本体や錠についている機器で乗車手続をする。利用後は、目的地近くのサイクルポートに返却し、決済すればよく、元の貸出場所に戻す必要はない。登録やサイクルポートの検索から貸出・返却、解錠・施錠、決済などの操作をスマートフォンの専用アプリで行うサービスや、自転車に加え電動キックボードなどを利用できるサービスもある。同一拠点に返却する必要があるレンタサイクルとは異なり、目的地近くのサイクルポートに乗り捨てできるうえ、24時間いつでも対面手続なしで利用できる利点がある。料金は、年間契約で1万数千円、月間で1500~3000円、1日利用で1000~2000円、1回(15分~60分)利用で100~200円程度に設定するケースが多い。事業者は利用料のほか、車体や荷籠(にかご)に掲載する広告やネーミングライツ(命名権)による収入などを収益源とする。
オランダのアムステルダムで1965年に行われた、ホワイトバイシクルプラン(White Bicycle Plan)とよばれる自転車共用運動が世界初の試みとされる。1990年代から環境対策として欧米で導入機運が高まり、世界に広がった。2019年時点で、中国、アメリカ、イタリアなどを中心に、世界の約2300の都市が導入しており、そのなかには日本の225都市も含まれる。日本では1980年代から各地で社会実験が進められていたが、正式な事業として最初にスタートさせたのは2010年(平成22)の富山市だった。日本政府は2021年(令和3)の第二次自転車活用推進計画に「シェアサイクルの普及促進」を明記し、補助金などでサイクルポートなどの整備を促している。地域公共交通活性化法(正式名称「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」、平成19年法律第59号)に基づく地域公共交通計画に、コミュニティ・サイクルを公共性を有する交通手段として位置づけ、民間事業者と連携してサービスを提供する自治体が増えている。2023年3月末時点では、全国305自治体が導入し、サイクルポートは1万か所を超える。国土交通省によると、1日1台当りの回転率(貸出回数)が0.5未満にとどまっている都市が約8割あり、回転率向上による収益改善が課題である。