低所得者や高齢者などが独力で速やかに住宅を確保できるようにする社会的な仕組み。所得水準・家族構成・身体的状況にかかわらず、最低限の安全な暮らしを保障するため、だれでも住宅を確保できる環境を整えていくべきとの発想に基づいている。日本の住宅セーフティーネットは、2007年(平成19)に公布・施行された「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律」(平成19年法律第112号。略称、住宅セーフティーネット法)と、2006年制定の住生活基本法(平成18年法律第61号)に基づく住生活基本計画(2011年閣議決定)に沿って政策が進められている。住むところのない人と民間の空き家・空き部屋の円滑なマッチングを基本に、住宅困窮者向け賃貸住宅、支援法人、家賃債務保証業者などを登録・指定・認定して住まい確保を促す。対象は低所得者、被災者、高齢者、障害者、子どもを養育している者のほか、外国人、犯罪被害者、ドメスティック・バイオレンス(DV)被害者、戦傷病者、被爆者(被爆者健康手帳所持者)、生活困窮者、海外からの引揚者、ハンセン病療養所入所者などで、法的に「住宅確保要配慮者」とよばれる。
国立社会保障・人口問題研究所は、ひとり暮らしの高齢者(単身高齢世帯)が2030年に800万世帯に迫り、2040年には1000万世帯を超えると試算している。しかし公営住宅の供給減に加え、家賃滞納や孤独死への懸念から、入居を拒まれる住宅弱者が増えている。そこで、政府は住宅セーフティーネット法を2017年(平成29)、2024年(令和6)などに改正し、住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅をセーフティーネット住宅(耐震性があり床面積25平方メートル以上)として都道府県に登録し、その情報を住宅困窮者へ提供して住まいの確保を促している。また、入居者の生活支援、相談・見守り、債務保証、死亡時の遺品(残置物)処分にあたる非営利活動法人(NPO)や社会福祉法人を居住支援法人(都道府県が指定)と位置づけ、居住支援法人などが借り上げて住宅困窮者に安く貸し出す居住サポート住宅(市区町村が認定)の供給や、入居者の家賃を立て替える家賃債務保証業者(国が認定)の整備を進めている。さらに、自治体が家主に対して住宅改修費、低所得の入居者に対して家賃をそれぞれ補助するほか、入居者死亡時に賃貸借が相続人に相続されないようにする終身建物賃貸借の認可手続を簡素化し、家主が貸しやすく入居者が借りやすい環境を整えている。