イギリス生まれ、アメリカ在住の経済学者。マサチューセッツ工科大学(MIT)教授。民主主義などさまざまな「社会制度が形成される過程を解明し、社会制度が国家の繁栄にどう影響するかの研究」が評価され、2024年のノーベル経済学賞を受賞した。ダロン・アセモグル、ジェームズ・ロビンソンとの共同受賞。専門は金融経済学、政治経済学、開発経済学。
イギリス中部のシェフィールド生まれ。1984年にオックスフォード大学を卒業し、1989年にマサチューセッツ工科大学(MIT)で経済学博士号(Ph.D.)を取得。アメリカのデューク大学、MITなどで教鞭(きょうべん)をとり、2004年からMIT教授。国際通貨基金(IMF)のチーフ・エコノミストなども歴任している。アセモグル、ロビンソンとの共同論文(2001)で、15世紀以降のヨーロッパ諸国の植民地に着目。そして現地の疫病による初期入植者の死亡率の高低がその後のヨーロッパ人入植者数を大きく左右したため、致死率が高く入植率の低いアフリカや中南米などの植民地では、短期的に利益を回収しようと住民を搾取する収奪型制度が優位を占め、一方、致死率が低かった北米やオーストラリアなどでは、入植者はその地での長期的な発展と定住を目ざし、権力が分散した民主的で自由な包摂型制度が生まれるなど、さまざまな社会制度の形成過程をデータを用いて分析。国家間で貧富の差が広がる背景に社会制度の違いが影響していることを数理モデルで説明し、持続的繁栄には民主主義、法治主義、公平・公正な競争の場などが重要であることを示した。一般向け著書が多数あり、アセモグルとの共著『技術革新と不平等の1000年史』(2023)では、技術革新は豊かさにつながるとの従来の概念が成立するには、技術革新がもたらす利益を公平に分配する制度や政策が欠かせないと主張している。