原子爆弾・水素爆弾による被害者(被爆者)団体の協議会。被爆者による唯一の全国組織。略称は日本被団協、または被団協。英語の名称はJapan Confederation of A-and H-Bomb Sufferers Organizations。1956年(昭和31)結成。一貫して核兵器の廃絶を訴え、被爆者援護に取り組んでおり、日本の反核・平和運動の中心的存在である。悲惨な被爆体験を発信し続け、核兵器なき世界の実現を目ざし、核兵器が二度と使われてはならないことを目撃証言を通じて身をもって示してきた運動が評価され、2024年(令和6)にノーベル平和賞を受賞した。日本人および団体の同賞受賞は非核三原則を宣言した元首相の佐藤栄作以来、2例目。
1954年、アメリカの太平洋ビキニ環礁水爆実験で第五福竜丸の乗組員が被爆した事件を機に反核機運が高まり、2年後、全国の被爆者団体が結集・結成した。2025年時点で36都道府県にある地方組織で構成され、事務局を東京都港区芝大門(だいもん)に置く。核兵器廃絶運動では、国際連合(国連)や核拡散防止条約(NPT)再検討会議など国際会議へ代表団を派遣し、被爆体験の証言、写真・絵画展の開催、演劇・詩・歌の上演・朗読などを通じて被爆の実相を伝えている。国際NGOの核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN(アイキャン))とも連携し、2017年の国連の核兵器禁止条約(2021年発効)採択を後押しした。「ノーモア・ヒバクシャ」を合いことばに息の長い活動を続けており、「ヒバクシャ」は世界に通じることばとなった。援護活動では、国家補償や国・自治体への援護施策の拡充の要求、被爆者健康手帳の申請支援、犠牲者調査などに取り組み、1994年(平成6)の「原爆被爆者援護法」(正式名称「原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律」平成6年法律第117号)制定などにつなげた。ノーベル賞の授与にあたっては、核兵器の使用は道義的に容認できないという国際規範を形成し、「核のタブー」という概念の確立に貢献したほか、若い世代へ被爆体験を継承している点も評価された。ロシアのウクライナ侵攻などで高まる核兵器使用リスクに警鐘を鳴らすねらいもあるとみられる。これまでに反核組織の受賞は、核戦争防止国際医師会議(1985)、核兵器廃絶を訴える科学者らのパグウォッシュ会議(1995)、ICAN(2017)がある。