日本大百科全書（ニッポニカ）

硬骨魚綱ハダカイワシ目ハダカイワシ科に属する海水魚。北海道以南の太平洋沖、千島（ちしま）列島、台湾、南シナ海、ハワイ諸島近海、オーストラリアやニュージーランド海域など西部・中部太平洋、東太平洋、インド洋に広く分布する。体は短くて体高は高く、体長の3分の1よりもわずかに高い。尾柄（びへい）は短く、その長さは高さにおよそ等しい。頭は短く、体長の3分の1よりすこし短い。頭長と頭高はほとんど等しい。吻（ふん）は丸くて短く、前方に飛び出さない。吻長は眼径の半分以下。口は小さく、上顎（じょうがく）の後端は目の後縁下にやっと達する。背びれの起部は臀（しり）びれ起部より著しく前方にある。背びれは12～15軟条、臀びれは18～20軟条で、臀びれ起部は背びれ基底（付け根の部分）後端下方近くにある。脂（あぶら）びれ（背びれの後方にある1個の肉質の小さいひれ）は臀びれ基底後端のすこし前上方にある。胸びれは14～16軟条、腹びれは8軟条。鰓耙（さいは）は上枝に8～10本、下枝に21～22本。鱗（うろこ）が落ちても側線上には馬蹄（ばてい）形の鱗がはがれた跡が明瞭（めいりょう）に残る。

　また、発光器は種の重要な特徴である。肛門（こうもん）上発光器SAO（図中⑫、以下同）は3個で、その間隔は広くて等しく、斜め上方に向かい、最上のものは側線と体の腹縁の中間より著しく上方にある。腹びれ上発光器VLO（⑨）は側線と体の腹縁の中間より下方に位置する。胸びれ下発光器PVO（⑧）は2個で、斜めに並ぶ。胸びれ上発光器PLO（⑦）は胸びれ基底上端よりも下にあり、最前の胸びれ下発光器の上方にある。体側後部発光器Pol（⑭）はない。前部臀びれ発光器AOa（⑬）と後部臀びれ発光器AOp（⑮）は連続して1列に並ぶ。両発光器の総数（AO）は10～13個で、臀びれ基底後端部でやや波打ち、後ろの3個は臀びれ基底後端より後方にある。腹部発光器VO（⑪）は4個で、ほとんど水平に並ぶ。尾びれ前発光器Prc（⑱）は2個で、尾柄後端下にやや斜めに並ぶ。

　最大体長は9センチメートルほどになる。昼間は水深200～750メートルにすみ、夜間には表層近くまで日周鉛直移動をする。

　体が短くて体高が高く、尾びれ前発光器が2個あり、胸びれ上発光器が胸びれ基底の上端より下方にあること、前部臀びれ発光器と後部臀びれ発光器が連続することなどで、ムカシハダカやオオメハダカProtomyctophum thompsoniに似るが、これら両種は胸びれ下発光器が水平に並び、最上の肛門上発光器が側線のかなり下方にあることなどで本種と区別できる。

［尼岡邦夫］2025年2月14日