(2021.10.4~2024.10.1 令和3~6)
2021年(令和3)に成立した自由民主党(自民党)と公明党による連立内閣。10月4日に第一次内閣が成立したが、その10日後に衆議院が解散されたため、この内閣は事実上の選挙管理内閣であった。10月31日の総選挙で自民党が単独過半数を維持し、11月4日に岸田文雄がふたたび首班指名を受け、第二次岸田文雄内閣が成立した。閣僚は外務大臣だった茂木敏充(もてぎとしみつ)(1955― )が自民党幹事長に就任した以外は第一次内閣からの留任で、外務大臣には岸田派の林芳正(1961― )が起用された。発足時の内閣支持率は各調査とも50%を超え、半年後の2022年4月の時点でも50%を超えており安定した状態にあった。
岸田は「新しい資本主義」の構築により「成長と分配の好循環を実現」することを内閣の使命に掲げ、注目される政策として富裕層のもつ金融所得への課税見直しを掲げたが、株価の下落を招きただちに封印された。その後は円安などによる物価高騰対策として2022年1月からのガソリンなどの燃料油価格高騰を抑制するための補助金や、2023年1月分からの電気・ガス料金への補助、2024年度での定額減税と、ばらまき色の濃い財政出動が続いた。
第6波を迎えた新型コロナウイルス感染症(COVID(コビッド)-19)対策として、2021年11月29日に「オミクロン株」の水際対策(空港や港湾で行う検疫や検査)強化のため外国人の新規入国停止を発表した。その後、新年になって感染が急速に広がり、1月7日に広島・山口・沖縄にまん延防止等重点措置の適用を発表(1月9日実施)、19日には東京を含む13都県に適用を拡大(1月21日実施)し、最終的には34都道府県が対象となった。その後、2022年3月21日をもってまん延防止等重点措置は解除され、一応の終息をみた。
2022年2月24日に始まったロシアのウクライナ侵攻では、北大西洋条約機構(NATO(ナトー))諸国と歩調を合わせ、国際銀行間通信協会(SWIFT(スイフト))からのロシアの締め出しや、ロシア中央銀行の資産凍結、各種の輸出入規制などの経済制裁を実施した。ロシアが平和条約交渉の中断などを表明したため、外務省は安倍晋三(あべしんぞう)政権以来使わなかった、北方領土はロシアによって「不法占拠」されているという表現を復活させた。
ロシアによるウクライナ侵攻や台湾をめぐる情勢などにより、日本を取り巻く安全保障環境が悪化しているとして、安倍政権の路線を継承し、防衛費を2027年度には対国内総生産(GDP)比2%に増額することと、敵基地反撃能力の保有を決定した。防衛費増の一部は増税でまかなうとしたが、経済界などの反発を招いた。エネルギー政策では、原子力発電所の新規建設や運転期間の延長を認める方針を決定。また、東京電力福島第一原子力発電所にたまる処理水の海洋放出も決定した。少子高齢化対策として「異次元の少子化対策」を打ち出したが、これも財源の見通しはたたないままに終わった。2022年7月に元首相の安倍が演説中に銃撃されて死亡すると、最大派閥の安倍派の意向を受け9月には国葬儀を行った。参議院選挙後の8月に内閣改造を行い、自民党政務調査会長となった萩生田光一(はぎうだこういち)(1963― )の後任の経済産業大臣として同じ安倍派幹部の西村康稔(にしむらやすとし)(1962― )を起用した。安倍銃撃事件の後、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と自民党議員との関係が問題となり、2023年10月には旧統一教会に対する解散命令が東京地方裁判所に請求された。2023年に入ると好調だった内閣支持率が下降し、不支持が上回るようになった。5月に岸田の地元の広島で行われた主要7か国首脳会議(G7サミット)の時期に一時支持率は上がったものの長続きしなかった。9月13日、第二次改造内閣を発足させ、外務大臣の上川陽子(かみかわようこ)(1953― )を筆頭に過去最多と並ぶ5人の女性閣僚を起用したが、副大臣、大臣政務官には制度発足以降初めて女性の起用がなく、この点が問題視された。12月に安倍派を中心に政治資金パーティーの収入の一部を裏金として議員に還流させていた問題が表面化し、自民党の派閥政治に対する国民の反発が急速に高まった。この結果、12月14日に官房長官の松野博一(ひろかず)(1962― )、西村康稔をはじめとする安倍派閣僚4人と副大臣5人、政務官1人が事実上更迭された。2024年8月、自民党総裁選を前に岸田は不出馬を表明し、10月1日第二次岸田内閣は総辞職した。