国から独立し、公的な事務および事業を実施する法人。すなわち、国民生活および社会経済安定等の公共上の見地から確実に実施されることが必要な行政事務および事業のうち、国が自ら主体となって直接に実施する必要のないもののなかで、民間の主体にゆだねた場合には実施されないおそれがあるもの、または一つの主体に独占して行わせることが必要であるもの(公共上の事務等)を効率的かつ効果的に実施させるために設立された法人をさす。独立行政法人通則法(平成11年法律第103号)および個別法(たとえば、独立行政法人酒類総合研究所法、国立研究開発法人国立環境研究所法、独立行政法人日本学生支援機構法など)の定めるところより設置される。
独立行政法人には、中期目標管理法人、国立研究開発法人および行政執行法人の三つの類型がある。2017年(平成29)4月1日時点では、独立行政法人の数は87法人であり、そのうち、中期目標管理法人は53法人、国立研究開発法人は27法人、行政執行法人は7法人となっている。独立行政法人は、独立採算制をとらないが企業会計原則が導入され、そのような制度設計に対応する厳しい評価制度が用意されている。イギリスのエージェンシーをモデルにしているといわれるが、似ているところはあるものの、実態はかなり異なっている。
独立行政法人ではないが、独立行政法人通則法が準用される法人として、国立大学法人法に基づいて設立される国立大学法人および大学共同利用機関法人、総合法律支援法に基づいて設立される日本司法支援センター、日本私立学校振興・共済事業団法に基づいて設立される日本私立学校振興・共済事業団がある。
独立行政法人は、行政改革会議の最終報告の趣旨にのっとって制定された中央省庁等改革基本法(1998年6月施行)に基づき、国の組織の再編成、国の行政事務および事業の減量化や効率化等の改革(「中央省庁等改革」)の一環として設立された(独立行政法人制度が発足した2001年に57法人が設立)。すなわち、独立行政法人は、行政機能のアウトソーシングを実施する仕組みの一つとして位置づけられ、行政機能を「企画立案機能」と「政策実施機能」に分けて、前者の機能は国が担い、後者の機能を独立行政法人が担うこととされた。また、「政策実施機能」を国とは別の法人である独立行政法人に実施させることで、業務の効率性、業務の質の向上、自律的な業務運営や業務の透明性を確保することが期待された。「政策実施機能」のうち、公権力の行使に係る事務・事業については国が直接主体として実施することとされたため、独立行政法人設立時には、公権力の行使を伴わない試験研究機関が中心となって独立行政法人化された(酒類総合研究所、経済産業研究所、建築研究所、国立環境研究所など)。
行政改革会議の最終報告では、特殊法人等の独立行政法人化も検討課題とされていた。これを受けて、特殊法人等改革基本法(2001年6月施行)に基づき、「特殊法人等整理合理化計画」が策定され、2003年に、163の特殊法人および認可法人のうち38法人が、新たに36の独立行政法人として設立されることになった(国民生活センター、国際協力機構、新エネルギー・産業技術総合開発機構など)。また2004年以降も、特殊法人等の独立行政法人への移行が行われた。独立行政法人は、中央省庁等改革の一環として、行政機能のアウトソーシングのために設立されたものであるが、もともと国とは別の法人格を有していた特殊法人等の受け皿としても活用されている。
2005年12月に閣議決定された「行政改革の重要方針」において国の特別会計の見直しの方針が示され、これを受けて、行政改革推進法(平成18年法律第47号。正式名称は「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律」)において、国立がんセンター、国立循環器病センター、国立精神・神経センター、国立国際医療センター、国立成育医療センターおよび国立長寿医療センターを独立行政法人に移行させることが定められ(33条)、2010年4月に独立行政法人化された(それぞれ独立行政法人化する際に、国立がん研究センター、国立循環器病研究センター、国立精神・神経医療研究センター、国立長寿医療研究センターと改称された)。
独立行政法人の設立が進められてきた一方、他方では法人の事務・事業の見直し、業務運営の効率化の向上、法人の民営化・廃止や統合、地方への移管、職員の非公務員化などの検討や実施が積み重ねられてきた。独立行政法人が発足した2001年の法人数は57であり、2005年には113まで増加したが、その後、法人の廃止や統合が実施され、法人数は減少した。また、発足時の公務員型の独立行政法人は52法人であったが、2017年4月時点では7法人となっている。2014年には、独立行政法人のガバナンス(統治)を強化することなどを内容とする「独立行政法人通則法の一部を改正する法律」(平成26年法律第66号)が成立した。同法は、独立行政法人の業務の特性に応じたガバナンスを構築するために、これまでの、役員および職員が公務員の身分を有する特定独立行政法人(公務員型の独立行政法人)と公務員の身分を有しない独立行政法人(非公務員型の独立行政法人)という分類を見直し、新たに、中期目標管理法人、国立研究開発法人および行政執行法人の三つの類型を設けることにした。さらに、政策のPDCAサイクル(PDCA:計画Plan、実施Do、評価Check、改善Action)を強化するため、主務大臣が目標を設定し、業務評価を行うことで、目標および評価の一貫性や実効性を向上させる仕組みなども導入された。
[山田健吾]