一国の経済規模を所得面から計測した指標のこと。GDIと略称される。国内総生産(GDP)は、生産、所得(分配)、支出の三面から観察すると、理論的には同じ値になる(三面等価の原則)。このうち、所得面からGDPを観察したものが国内総所得である。
GDPには名目値と実質値がある。このうち名目値については、生産面のGDP、所得面のGDI、支出面の国内総支出(GDE:gross domestic expenditure)の金額はほぼ等しくなる。しかし、厳密にいえば、私たちがGDPの金額と認識しているのはGDEの金額であり、GDPとGDIは「統計上の不突合(ふとつごう)」(概念上は一致すべき値に生じた誤差)の分だけ乖離(かいり)している。
これに対し、実質値についてはGDIとGDPとは概念も金額も異なっている。具体的には、実質GDIは、実質GDPに交易利得を加えたものである。交易利得は、交易条件の変化によって生じる一国の経済における貿易の利益や損失を表している。
2024年(令和6)12月に公表された年次推計(2023年度国民経済計算)によると、2023年度の実質GDPは555.8兆円であるが、実質GDIは交易利得がマイナス9.1兆円であった(つまり交易損失)ため、546.7兆円と、実質GDPより少なくなっている。2005年度(平成17)以降についてみると、2008年度、2011~2014年度、2018~2019年度、2021~2023年度において交易損失となっており、日本が輸入に依存する資源価格が高騰すると交易損失になる傾向が確認できる。
ちなみに、この実質GDIに海外からの所得の純受取の実質値を加えたものが実質国民総所得(実質GNI)である。